2020 Fiscal Year Research-status Report
セラミック製ガス電子増幅フォイルを用いたミュオグラフィ非破壊検査装置の開発
Project/Area Number |
20K14507
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
武内 陽子 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第一部電気電子技術グループ, 副主任研究員 (40780987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガス電子増幅フォイル / GEM / ミューオン / 非破壊検査器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宇宙から降り注ぐミューオンを用いた非破壊検査技術に着目し、高位置分解能かつリアルタイム測定ができる小型ミューオン検出器として、ガス電子増幅フォイル(GEM)を用いた3次元飛跡取得システムを開発している。この検出器の要でもあるGEMは厚み100μmの絶縁シートを2枚の電極で挟み、表面に200μmの間隔で100μmの無数の貫通孔を開けた構造をしており、両電極間に一定の電圧を印加して一つ一つの孔で電子増幅を起こさせる。こうして、GEMの上部でミューオンの飛跡上にできた微量な電子雲の形を崩さずに2次元で増幅して、読出しピクセルと各ピクセルに到達した時間差の3次元情報を精度良く観測すれば、ミューオンの飛来方向が特定し、レントゲン写真の様に対象物の非破壊画像を得ることが出来る。この検出器で重要なGEMが放電で壊れない様にするため、我々が開発を行っている絶縁体を無機物のセラミックス(LTCC)にしたLTCC-GEMを搭載することにした。 初年度の令和2年度の研究目標は、LTCC-GEMを放電がさらに起こりにくくする改良である。しかし、開発段階から使用していたLTCC材が製造中止になってしまい、他メーカのLTCC材を使用することが余儀なくされた。新しいLTCC材で作成したLTCC-GEMは、放電がしやすく従来ほどの性能が出ない事が性能評価から判断した。現在、原因の追求と製造の対策方法を検討中である。また、本年度は同時並行でミューオン飛跡検出用の信号読出し装置の制御プラグラムとデータ解析プログラムの作成を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の目標であるLTCC-GEMの改良であるが、現在、LTCC-GEMに使われているLTCCシート材が、開発当初から使用していた物が生産中止になったため他社のシート材に変更すると製作業者から連絡を受け、新旧シートによる性能調査が割り込まれた。現段階では、新シートのLTCC-GEMは、放電が起こりやすく、以前程の高い電子増幅率を得ることができなかったり、両電極間で導通し動作できなくなってしまう。その測定と原因究明に時間を割いてしまった。また、データ処理用プログラム作成に関しても、データが取得出来るところまでは完了しているが、解析用プログラムの実装は未完成である。
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Strategy for Future Research Activity |
【LTCC-GEMの改良】 初年度で遅れてしまったが、新LTCC材製のGEMでも従来品と同等性能になるように対策と試作を行う。そして、放電数を押さえたLTCC-GEMの作成を目指す。 【解析プログラムの最適化】 現在作成中のプログラムを改良し、本研究に最適化したデータ取得・解析プログラムになるよう作成・修繕を行う。 【封入ガスや印加電場などの運用パラメータの検討】 ミューオンを効率良く検出するために、LTCC-GEMの印加電場や各種運用パラメータの検討が必要である。具体的にはミューオンとガスの相互作用から、最適なガス種とその圧力に見当をつけ、実際に作成した検出器を用いて評価を行う。同様に、ミューオンの飛跡情報を持つ電子雲の形状を読み出しピクセルへと移動させる印加電場も、検出効率との関係を調査し、GEMなどで放電が起こらずに安定して運用できる電場パラメータを決定する。
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Causes of Carryover |
当該年度ではコロナ禍によって学会や出張が延期またはオンラインになったため、大幅な旅費削減となった。 次年度には、2021年度に開催が決定しているイスラエルでの国際学会に参加するための旅費の一部と、新LTCC-GEM評価に関わる消耗品費に充てる。
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