2022 Fiscal Year Research-status Report
セラミック製ガス電子増幅フォイルを用いたミュオグラフィ非破壊検査装置の開発
Project/Area Number |
20K14507
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
武内 陽子 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 研究開発本部物理応用技術部電気技術グループ, 副主任研究員 (40780987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ガス電子増幅フォイル / GEM / 非破壊検査装置 / 宇宙線ミューオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宇宙から降り注ぐミューオンを用いた非破壊検査技術に着目し、高位置分解能かつリアルタイム測定ができる小型ミューオン検出器として、ガス電子増幅フォイル(GEM)を用いた3次元飛跡取得システムを開発している。この検出器の要でもあるGEMが放電で壊れない様にするため、我々はGEMの絶縁体を無機物のセラミックス(Low Temperature Co-fired ceramics (LTCC):低温同時焼成セラミックス)にしたLTCC-GEMを開発し、装置に搭載することにした。 本年度の研究目標は、前年度に引き続き、LTCC-GEMの放電がさらに起こりにくくする改良であるが、製造上の関係でLTCC材の変更をしなければならない。新候補となる2種類のLTCC材でLTCC-GEMのテストピースを複数枚作成し、Ar/CO2(70%:30%)のガスフロー下でGEM印加電圧と電子増幅率や放電数などの関係性を調査した。結果、従来品の物と比べ、低いGEM印加電圧で放電が発生し測定に影響を及ぼすだけでなく、電子増幅率も半分以下に低下していることが分かった。さらに今回同時期に作成した従来LTCC材のGEMも以前ほどの性能が出ないことが判明した。それぞれのGEM表面の穴加工エリア全面を顕微鏡撮像し、穴加工精度や電極面の様子を確認した。現在、それらのデータをまとめ、原因の解明と製造方法の対策を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は新材料のLTCC-GEMの放電問題の原因と改善を行う予定で、育休取得を終えて10月から研究を再開した。しかし、妊娠悪阻による体調不良により12月上旬から3月上旬までの間、研究を中断しており、進捗は大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
LTCC-GEMの改良: 新LTCC材製にしたためか以前ほど性能が出なくなってしまったGEMの問題点を洗い出し、従来品と同等性能になるように対策と試作を行う。おそらくGEMの穴の中に入り込んでしまったゴミが起因だと考えているが、それ以外にも穴径や基板の厚み電極の剥離具合等、関係がありそうな箇所を調査していく。そして従来品より放電数を押さえたLTCC-GEMの作成を目指す。 [令和5年度(延長1年目)以降] 勤務時間の変動がある可能性があり、現時点では暫定的に下記のような計画をしている。 GEMの問題が特定できない場合、引き続き調査を行う。また、得られた成果等は学会発表や論文等にまとめる。また、検出器の開発では、ハード面の構造の最適化および、解析プログラムの最適化を目指す。現在作成中の画像取得プログラムを改良し、本研究に最適化したデータ取得・解析プログラムになるよう作成・修繕を行う。機器内部の最適化には、封入ガスや印加電場などの運用パラメータの検討を行う。ミューオンを効率良く検出するために、LTCC-GEMの印加電場や各種運用パラメータの検討が必要である。具体的にはミューオンとガスの相互作用から、最適なガス種とその圧力に見当をつけ、実際に作成した検出器を用いて評価を行う。同様に、ミューオンの飛跡情報を持つ電子雲の形状を読み出しピクセルへと移動させ る印加電場も、検出効率との関係を調査し、GEMなどで放電が起こらずに安定して運用できる電場パラメータを決定する。 それらを組み合わせた上で、宇宙線ミューオンによる構造物の透過画像を取得する。
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Causes of Carryover |
育休取得により研究再開したのが2022年10月中旬であり、所属機関の物品発注可能最終期限の12月上旬までに物品の購入調整ができなかったため、予算を計画通りに使うことができなかった。 次年度(2023年度)以降の使用計画について。2023年度もまた6月から産休及び育休に入るため、研究再開した際の勤務時間にもよるが、引き続き研究目標の達成ため、柔軟に対応していきたい。
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