2022 Fiscal Year Research-status Report
Nebular emission of Kilonovae
Project/Area Number |
20K14513
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仏坂 健太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50867033)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | キロノバ放射 / 重元素の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に作成したキロノバ星雲期における重元素の放射過程の計算に必要となる原子の禁制線のリストを用いて、2017年に観測されたGW170817に付随したキロノバ放射の7.5日から10.5日後のスペクトルデータを再現できるモデルの作成を行なった。具体的には、Very Large TelescopeのXshooterという観測器で取得された可視光から近赤外線領域をカバーするスペクトルには、2.1ミクロン付近に強い輝線が現れており、この輝線に関する解釈を行なった。禁制線のリストからこの輝線は原子番号52番のテルリウムの2価イオンの微細構造線である可能性が高いことを示した。観測された輝線強度とプロファイルから必要となるテルリウム原子の質量はおよそ太陽質量の0.1%程度で膨張速度が光速度の8%程度であることがわかった。この質量と膨張速度ともに中性子星合体によって生成されるエジェクタの性質と整合的であり、中性子星合体によって生成されるエジェクタの組成分布は太陽系に含まれるR過程元素の分布と無矛盾であることを示した。この結果はAstrophysical Journal Letterに投稿予定である。 キロノバ星雲期におけるイオン化状態を計算するために必要となる数値コードを開発した。具体的には、中性子過剰核のベータ崩壊によって生成される高速電子が中性子星合体エジェクタ内のイオンと自由電子と相互作用しながら減速する過程を解くことで、高速電子のエネルギースペクトルを求めることに成功した。このスペクトルの計算において、イオン化によって生成される2次電子や内核電離に付随するオージェ電子の生成も考慮した。このエネルギースペクトルと電子衝突によるイオン化の散乱断面積を組み合わせることにより、各時刻におけるイオンの電離率を求めることが可能になった。このコードを今後のキロノバ星雲期の放射モデルに実装する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重元素の禁制遷移のリストがおおむね完成し、イオン化と電子温度を仮定してキロノバ星雲期の放射スペクトルを計算し観測データと比較できるようになったことは当初の計画以上に進行していると言える。一方で、イオン化の計算の計算に必要となるイオンの再結合係数に関しては当初想定していたよりも時間がかかっており少し遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
イオン化の計算に必要となる再結合係数の計算を進める。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響による海外の共同研究者との研究交流が難しかったため、次年度に繰越し海外の共同研究との共同研究のための使用する計画に変更した。
|