2021 Fiscal Year Research-status Report
恒星ストリームの重力多体計算で駆動する暗黒衛星銀河探査
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20K14517
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三木 洋平 東京大学, 情報基盤センター, 助教 (70734375)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 重力多体シミュレーション / 銀河進化 / 銀河衝突 / 銀河考古学 / GPUを用いた演算加速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を遂行する上では多数回の重力多体シミュレーションを実行する必要があり,主に用いるスーパーコンピュータは東京大学・情報基盤センターのWisteria/BDEC-01(2021年8月2日から正式運用開始)である.Wisteria/BDEC-01にはNVIDIA社のA100というGPUが搭載されるため,申請者が開発してきた重力多体シミュレーション用コードであるGOTHICをWisteria/BDEC-01向けに調整・最適化した.この結果,A100の一つ前の世代のGPUであるNVIDIA V100に対して1.2-1.6倍の高速化を達成した.この1.6倍という数値はV100とA100の理論ピーク性能比である1.2倍よりも大きく,研究遂行の加速にはGOTHICの最適化からの寄与が大きいということを意味する. 恒星ストリームと暗黒衛星銀河の衝突実験においては,複数の衝突パラメータの下で長時間シミュレーションを行い,衝突直後だけではなくその数十億年後に渡っての時間進化を詳細に研究した.これによって,恒星ストリームが暗黒衛星銀河の衝突によって受ける影響は短期的・局所的なものにはとどまらず,より大規模な影響を受けることが分かってきた.本成果については,現在査読付き論文誌への投稿を準備中である. また,銀河衝突シミュレーションの実行中に同時に解析処理を施すためのコード改良も並行して行った.主計算である銀河衝突シミュレーションをGPU上で,副計算である解析処理をCPU上で行うことで,全体の処理を効率的して研究全体の高速化につながった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度から2021年度前半までにかけて継続的に行ってきた計算コードの性能最適化によって,Wisteria/BDEC-01に搭載されているNVIDIA A100の高い演算性能を十分に引き出せるようになった.これによって多数回の銀河衝突実験を長時間に渡って計算できるようになった.当初は恒星ストリームが暗黒衛星銀河の衝突によって受ける影響は短期的・局所的なものにとどまると考えていたが,より大規模な影響を受けることが分かってきた.現在はこの計算結果を詳細に解析中であり,査読付き論文誌への投稿準備を進めている.また,主計算と副計算の同時処理によって研究フロー全体の効率化も図れた. 長引くコロナ禍によって国内外への研究会に参加して対面で情報交換することは2021年度においてもかなわなかったが,オンライン研究会における議論を通じて最新の観測研究による成果を共有してもらうことができた.この観測研究によればアンドロメダ銀河のNorth-Westernストリームまでの距離推定結果が既存研究の結果から更新されうるとのことであり,本研究を遂行する上でも極めて重要な情報を入手できたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究によって,Wisteria/BDEC-01に搭載されるA100向けの性能最適化が完了した.また,主計算である銀河衝突シミュレーションと同時進行で解析処理を施すことで,研究全体の効率化も実現できた.最終年度である2022年度においては,ここまでで開発してきたコード群を最大限に活用して銀河衝突シミュレーションを遂行していく. また,長時間シミュレーションによって得られた結果を詳細に解析していくことで,暗黒衛星銀河の質量や衝突軌道などのパラメータと,衝突された恒星ストリームが受ける影響との関係を明らかにし,査読付き論文誌での採択を目指す.
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Causes of Carryover |
会計処理の都合上,2021年度分の計算機利用料(区分はその他)の支払いが2022年度に執行されることになったため,次年度使用額として繰り越された. したがって,繰り越された分については2021年度分の計算機利用料として2022年度に支出される予定である.
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Research Products
(5 results)