2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of an impact of X-ray emisstion from the active galactic nucleus on star-formation history
Project/Area Number |
20K14529
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
川室 太希 国立天文台, ハワイ観測所, 特別客員研究員 (60867935)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超巨大ブラックホール / 活動銀河核 / X 線観測 / ミリ波観測 / 星間ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河中心には超巨大ブラックホールがあり、それに質量が降着すると、重力エネルギーの開放に伴い激しい X 線放射が起こる。このような状態にある超巨大ブラックホールを活動銀河核 (AGN: active galactic nucleus) と呼ぶ。X 線は、透過力が高いために広く周辺の星間ガスに影響を及ぼす。その影響の一つに分子の破壊がある。これまでの観測から、分子ガスは、星形成の源とされており、結果的に、X 線放射が、星形成に影響を及ぼす可能性がある。
そこで、X 線望遠鏡 Chandra とサブミリ・ミリ波干渉計 ALMA を用いることで、X 線放射が星間ガスに影響を及ぼしているかを観測的に研究した。今回、近傍に存在する AGN を持つ銀河 NGC 2110 に着目した。これまでの研究から、AGN から約 1000 光年の領域で、冷たい分子ガス (温度にして約数 10 K) が東西方向に存在するのにも関わらず、南北方向には、少ない可能性が示唆されていた Chandra の 240 光年を達成した高い空間分解能のデータを用いることで、X 線がガスに当たることで放射される鉄の蛍光 X 線が南北方向で明るいことを発見した。加えて、同等の高い分解能を持つ ALMA を用いて、冷たい分子ガスをトレースする CO(J=2--1) 輝線の空間分布と比較することで、空間的に反相関していることがわかった。現状得られる以上の観測データからは、CO や H2 と言った分子ガスが破壊されている、もしくは、CO 分子がより高い回転遷移に励起されている可能性が示唆され、いずれの説でも X 線が星間ガスに影響を及ぼしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな天体に対して、AGN からの X 線放射が星間ガスに影響を及ぼしている可能性を示すことができた。そして、筆頭著者として、その結果を欧文雑誌 The Astrophysical Journal に出版することができた (Kawamuro et al. 2020, ApJ, 895, 135)。 また、これまでの研究で得られた Chandra や ALMA のデータの解析技術や、X 線放射や分子ガスの性質の知識をもとに、より大きなサンプルについて系統的な研究を開始している。これにより、AGN の X 線が普遍的に、星間ガスに影響を及ぼしているのかを議論する。サンプルは、硬 X 線サーベイによって選択された 26 個の AGN で、可視光などでは見つからないような星間ガスに隠された AGN も含むバイアスの少ないものを構築した。それらの Chandra と ALMA のデータ解析はすでに終了しており、欧文雑誌への掲載に向けて論文の執筆が進んでいる。 以上のとおり、これまでの研究成果を論文として出版し、また次の研究に関しても論文への執筆段階であることから、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの個々の AGN に対する研究で得られた解析技術をより大きな AGN サンプルに当てはめることで、統計的な議論を行い、研究成果を論文として出版する。 以上の研究は、特に X 線で選択されたバイアスの少ない AGN サンプルに対しての研究であったが、X 線であっても極めて厚い吸収体 (水素柱密度にして 10^24 cm^-2 以上) に覆われた AGN を検出することは困難である。そこで、そのような AGN でも検出し、議論ができるように、新たなミリ波を用いた AGN 検出法について検討する。ミリ波は、10^26 cm^-2 に及ぶ吸収体であっても透過すると期待される。これまでの ALMA の解析技術をもってして、AGN 近傍からのミリ波放射をホスト銀河からの成分と分離し、その光度を計測し、AGN からの X 線光度と比較する。これにより、ミリ波を用いて AGN の活動性を推定また、検出できるかを議論し、論文としての出版を目指す。また、この研究に重要な AGN のサンプルを、新たに ALMA の観測提案書を書き取得することも同時にすすめる。
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Causes of Carryover |
前年度は、COVID-19 のために学会発表や共同研究のための出張ができなく、そのために旅費がかからず、次年度使用額が生じた。 これからの状況は不透明ではあるが、次年度では国内、海外含めて出張が基本的にできるようになった場合には、今までできなかった分も含めて研究成果の発表と議論を行うために、出張ができればと考えている。
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Research Products
(12 results)