2021 Fiscal Year Research-status Report
大規模すばるHSC・赤外線衛星データで探る銀河とブラックホールの環境依存性の起源
Project/Area Number |
20K14530
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
久保 真理子 愛媛大学, 宇宙進化研究センター, 特定研究員 (40743216)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 銀河形成進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、1. すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam (HSC) による大規模可視光遠方銀河探査から選ばれた銀河高密度領域=原始銀河団の赤外線全天観測アーカイブデータの統計解析、2. 原始銀河団銀河の詳細な研究の2つのアプローチから、銀河・超巨大ブラックホールがどのように共進化し、現在の宇宙における銀河の環境依存性が形成されたかを解明することを目的としている。 本年度は2に関連して、赤方偏移z=3.09(115億年前)の原始銀河団における巨大楕円銀河の発見について査読論文を受理された。この論文では現在の銀河団を占める巨大楕円銀河が115億年前の原始銀河団で既に現れ始めたことを示した。原始銀河団に付随する巨大楕円銀河として最遠方の天体の発見である。また同原始銀河団における活動銀河核の性質に関する研究成果をまとめ、査読論文に投稿した。巨大楕円銀河は宇宙初期に大部分の星を短期間に形成し、その後急激に星形成を抑制したことが近傍銀河のスペクトルなどから示唆されているが、その抑制機構はよくわかっていない。この研究では、大型望遠鏡による近赤外線分光観測等から活動銀河核による星形成抑制の働きを調べ、星形成が一度抑制された後も活動銀河核による強い銀河風で星形成の抑制が維持されていることを示した。これらの研究成果は、約100億年前の銀河団で急激に巨大楕円銀河が成長し、その星形成抑制に活動銀河核が強く関わってきたことを示す重要な成果である。 1については特に星形成が活発な時代の原始銀河団を同定するためのジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)、アルマ望遠鏡(ALMA)による観測を行った。今後更に原始銀河団の統計解析によって銀河団の典型的な星形成率・巨大ブラックホール進化史を解明し、銀河の環境依存性がどのように出来上がったか解明していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画は、1. すばる望遠鏡 Hyper Suprime-Cam (HSC) による大規模可視光遠方銀河探査から選ばれた原始銀河団の赤外線全天観測アーカイブデータの統計解析、2. 原始銀河団銀河の詳細な研究の2つのアプローチから、銀河・超巨大ブラックホールがどのように共進化し、現在の宇宙における銀河の環境依存性が形成されたかを解明することを目的としている。 1に関しては、すばる望遠鏡Hyper Suprime-Cam による大規模可視光遠方銀河探査から選ばれた原始銀河団候補について、赤外線画像の統計的解析を行う予定であったが、赤方偏移4より遠方の原始銀河団における近傍銀河団の混合の問題が解消されていない。観測精度が大きく影響しているため、研究期間内に解消は難しいという結論に至った。原始銀河団候補の代替として、原始銀河団が付随するとされる遠方電波銀河周辺領域を用いる形に計画を修正した。Parkes Southern Radio Source Catalog から得られた赤方偏移0.5<z<4電波銀河カタログを用いた試験解析を行い、確かに遠方電波銀河周辺領域では銀河密度超過が存在することを確認した。また、特に活発な星形成を行っている赤方偏移z>5 原始銀河団候補をすばる望遠鏡HSC、Atacama cosmology telescope(ACT) equatorial surveyデータ等を用いて探査し、ALMA望遠鏡、東アジア天文台JCMTを用いたサブミリ波観測が採択され、2領域の観測が完了した。 2については、赤方偏移z=3の原始銀河団銀河について、査読論文1本を出版、論文1本を投稿し、概ね順調に進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
原始銀河団の統計解析に関しては、明るい遠方電波銀河カタログのParkes Southern Radio Source Catalog 、およびすばる望遠鏡HSCによる大規模可視光遠方銀河探査とKarl G. Jansky Very Large Array電波銀河探査に基づく暗い遠方電波銀河カタログを用いた遠方銀河高密度領域候補の赤外線画像スタック解析を行い、隠れた銀河形成・超巨大ブラックホール進化の環境依存性を探る。21年度に行った試験解析によれば、当初の計画であるすばる望遠鏡HSCに基づく原始銀河団カタログを用いた場合と同等の成果が得られる見込みである。すばる望遠鏡HSCによる赤方偏移 z<1の大規模銀河団カタログを用いた同様の解析も行い、査読論文として投稿する予定である。HSC、ACTを用いて選ばれ、ALMAおよびJCMTによってフォローアップ観測を行ったz>5原始銀河団候補の研究も進める。 原始銀河団銀河の詳細な研究に関しては、21年度に原始銀河団で発見した活動銀河核の性質を、近傍銀河スペクトルカタログ(スローンデジタルスカイサーベイ)に基づいて選ばれた近傍類似天体を用いてより詳細に解明する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は、新型コロナウィルス蔓延のため、国内研究会にかかる旅費がキャンセルとなったために生じた。 22年度分の助成金は、主に査読論文の出版費用、国内外研究会旅費に用いる計画である。
|
Research Products
(7 results)