2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic nature of active galactic nucleus torus revealed by multi-phase gas observations
Project/Area Number |
20K14531
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
泉 拓磨 国立天文台, ハワイ観測所, 特任助教 (40792932)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活動銀河中心核 / AGN / 星間物質 / トーラス / ALMA / ミリ波サブミリ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
活動銀河中心核まわりの多相星間物質が織りなす多層的な力学構造を解き明かし、中心核の遮蔽現象(トーラス)の物理的起源を解明するのが本研究課題の目的である。今年度は、申請者の先行研究(近傍宇宙の比較的低光度銀河核であるCircinus銀河に対する高解像度ALMA観測; Izumi et al. 2018, ApJ, 867, 48)で示された、中心核周辺での炭素原子輝線放射強度の増加の普遍性を調べるために、より高光度な銀河核に対するALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)を用いた高解像度観測データを解析した。その目的は、銀河核からのX線放射により、CO分子が「解離」されてC原子が増加するという星間化学の予測を検証することにある。CO分子とC原子はそれぞれ、分子ガスと原子ガスをよく捉えることのできるプローブであるため、この解離現象の様子を観測的に解明することは、本研究課題目的である多相物質の分布を調べる上で非常に重要である。
観測は、近傍宇宙の高光度活動銀河核の1つ、NGC 7469に対して行なった。ALMAによる130 pc相当の高解像度観測の結果、この銀河の中心核周りでは、明確にCO放射が弱まっており、それとは相補的にC原子放射が増大していた。輝線強度の非局所熱力学平衡モデル計算を、星間化学モデルの予測と比較したところ、この現象は明確に中心核からのX線放射による分子解離現象に起因すると結論できた。長らく活動銀河核に対して予測されていた、X-ray Dominated Region (XDR)に関し、ミリ波サブミリ波帯の豊富な分子・原子輝線観測を動員してなしえた、初めての観測証拠である。
本成果はT. Izumi et al. 2020, ApJ, 898, 75として出版されたほか、その結果の重要性から、国立天文台よりプレスリリースもされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文出版に加えてプレスリリースという成果を出せたが、それでもなお当初の予定よりは遅れている。その原因は、COVID-19の蔓延により、南米チリに設置しているALMA望遠鏡(本研究課題で主に用いる装置)が運用を休止したことにある。これにより、約1年にわたり観測が停止し、当然ながら研究遂行に必要なデータの取得も滞っている。2020年度に論文化した内容は、幸いにも運用休止以前に取得していたデータでなされたものだが、本来の計画では、この2020年度中(夏頃)により高い解像度のデータを取得予定であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年春よりALMAの運用が再開した。全体の観測スケジュールは遅れているものの、申請者の観測提案は最高ランクで採択されており、その実行は観測所に保証されている。したがって、2021度中頃までには観測対象天体の非常に高解像度なCO分子、C原子輝線データが届く予定である。それらを使って、2021年度は、まずはCircinus銀河に対する高解像度観測の「決定版」となる結果を打ち出す。具体的には、完全に空間分解した分子ガス + 原子ガス放射の分布を描き出し、モデルの不定性を排除して多相星間物質(ここでは分子と原子)が異なる分布をとっているかどうかを検証する。これは、活動銀河核の遮蔽構造のゆたかな化学的特性を直接描く、初めての成果となる。
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Remarks |
プレスリリースページ
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Research Products
(18 results)