2020 Fiscal Year Research-status Report
数値実験による高速自転小惑星の変形過程の解明と内部物性への応用
Project/Area Number |
20K14536
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
杉浦 圭祐 東京工業大学, 地球生命研究所, JSPS特別研究員 (70846344)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コマ型小惑星形成 / 高速自転変形 / 数値シミュレーション / 高い実効的摩擦角 / 速い自転加速機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
JAXAの探査機はやぶさ2が訪れた小惑星リュウグウは瓦礫の集合体であるラブルパイル天体であり, そろばんの珠のような形状(コマ型)をしている. そのような形状は小惑星の高速自転に伴う変形で形成されたと考えられているが, コマ型への具体的な変形プロセスやコマ型の形成条件は明らかになっていない. 本年度は既存のラブルパイル天体の動力学を取り扱うことのできるSmoothed Particle Hydrodynamics (SPH) 法の計算コードを使用して, 小惑星の自転加速に伴う変形の数値シミュレーションを実施した. ラブルパイル天体構成物質の摩擦角と自転加速タイムスケールを主なパラメータとし, どのような条件の元でコマ型形状に変形しうるのか調べた. その結果, 摩擦角が60度以下の場合は内部変形を起こして扁平楕円体に近い形状になるが, 摩擦角が70度以上と高い場合には表面地滑りを起こしてコマ型形状に進化しうることがわかった. このような非常に高い摩擦角は, リュウグウのような重力の低い天体では構成物質の付着力によって実効的に実現することが可能である. また摩擦角が70度以上の場合でも, 自転加速タイムスケールが数日程度以下であればコマ型に進化するが, 自転加速タイムスケールが1ヶ月以上だと局所的な表面地滑りが起きて非軸対象な形状に進化することがわかった. これはコマ型の形成にはYORP効果のような遅い自転加速機構よりも, 破片の集積などの速い自転加速機構が有利であることを示唆している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り, 既存の数値計算コードを使用して小惑星の高速自転に伴う形状変形の数値シミュレーションを実施し, コマ型に変形するような条件を見つけることができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の数値計算コードには引っ張り力としての付着力は導入されていなかった. コマ型の形成には付着力による高い実効的摩擦角が必要であることが1年目の研究で分かったため, 引っ張り力としての付着力を実装した数値計算コードで同様のシミュレーションを行い, 整合的な計算でもコマ型の形成が可能かどうか調べる必要がある. 天文の分野では付着力を陽に扱うことのできる数値計算コードは存在していないため, 工学分野で使用されている付着力が導入されている計算手法 (e.g., Bui et al. 2008) を参考にして, 付着力を取り扱うことのできる計算法を開発する. 実装後は付着力を持つ粉体の斜面の崩壊の実験などの結果と数値計算で再現をした結果を比較し, 開発した計算コードの妥当性を検証する.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で学会発表に伴う出張が不可能であったので, 旅費の使用が極めて困難であったため. 次年度は論文の出版費用や物品費として使用する予定である.
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