2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14539
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
森脇 涼太 千葉工業大学, 地球学研究センター, 研究員 (40832019)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 火星隕石 / 火星マントル / 鉛同位体 / ウラン-鉛年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、火星由来の玄武岩であるシャーゴッタイト隕石にウラン-鉛放射壊変系を適用することで、火星マントルの化学進化史に鉛同位体システムからの新たな制約を加えることを目的としている。シャーゴッタイト隕石から地球汚染成分を取り除いた少量のフラクションに対して、研究代表者らのグループが開発した同位体分析手法を適用し、高精度な火星マントルの鉛同位体情報を取得する。 本研究では微小量(約100ピコグラム)の鉛の同位体分析を想定しているため、鉱物分離から表面電離型質量分析計(TIMS)による測定までのすべての手順を低ブランク環境下で行う必要がある。そこで、初年度である2020年度には、東京工業大学の実験室において実験器具の酸洗浄を入念に行った後に実験環境ブランクの測定を行い、微小量鉛の分析が実施可能な実験環境であることを確認した。この実験環境を使用して、既に入手済みであったシャーゴッタイト隕石試料について、(1)従来の手法である全岩試料の段階的酸処理法による分析と、(2)本研究で新たに行う鉱物分離試料の分析、の2つの異なるアプローチによる鉛同位体分析を行った。この実験から、鉱物分離試料の分析から得られる初生鉛同位体組成は、全岩試料の分析と比較して放射性起源の鉛に乏しいことが明らかとなった。この結果は鉱物分離によってより正確な初生鉛同位体組成の決定が可能であることを意味し、本研究のアプローチが適切であることを示している。今後は、今年度確立した手法を多くのシャーゴッタイト隕石試料に適用することで、火星マントルの鉛同位体データを蓄積していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では、(1)微小量鉛の同位体分析のための実験環境の確立と、(2)入手済みのシャーゴッタイト隕石試料の分析、の2つを完了することが2020年度の達成目標であった。(1)の実験環境の確立については、東京工業大学での分析が現段階で可能であること、千葉工業大学においても鉱物分離までの作業が可能となったことなどから、計画通り実施できたといえる。一方で、(2)シャーゴッタイト隕石試料の分析については、当初予定していた試料数の分析の実施には至らなかった。2020年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、東京工業大学での実験を予定通りに実施できず、(1)の作業に想定以上の期間を要してしまったためである。2021年度以降の研究推進に向けた準備は完了したものの、予定していた試料の分析ができなかったため「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度確立した実験環境を使用し、引き続きシャーゴッタイト隕石試料の鉛同位体分析を実施する。2020年度の実験では分析手法の確認を主な目的としていたため、比較的入手しやすく、地球上での汚染の影響を受けているシャーゴッタイト隕石試料を使用した。2021年度からは本研究のために提供を受けた地球汚染の影響の小さいシャーゴッタイト隕石試料の分析を実施し、火星マントル内のソースリザバーの鉛同位体組成およびミュー値(238U/204Pb比)の決定を行う。また、2021年度からは千葉工業大学の実験室を使用して鉱物分離までの作業を行うことで、東京工業大学での実験回数を最小限とし、新型コロナウイルス感染拡大の影響を可能な限り避けつつ研究を推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で参加を予定していた学会・研究会が中止となったため、その旅費・参加費が少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は2021年度の実験消耗品費に充てるほか、追加のシャーゴッタイト隕石試料の購入費用として使用する。
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