2020 Fiscal Year Research-status Report
系外ガス惑星の熱進化モデルの構築:ガス降着過程の影響の解明
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20K14542
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
國友 正信 久留米大学, 医学部, 助教 (20794621)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ガス惑星 / 惑星内部構造 / 降着 / 惑星の進化 / 原始惑星系円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,現実的な「ガス降着による熱の注入量」と「惑星内部での熱の分配」を考慮することで,ガス惑星の熱進化過程を解明することである。初年度である今年度はその基礎として,惑星が誕生する場である原始惑星系円盤の進化についての理論研究を行った。原始ガス惑星に降着するガスは原始惑星系円盤由来であるため,その理解は必須のものである。このようなモデル構築は以前から取り組んできたものではあるが,太陽系外のガス惑星は太陽より重い星の周りにも数多く検出されている現状を鑑み,太陽とは異なる質量の中心星の周りでの円盤進化についての数値計算を行った。その結果,特に太陽より重い星の周りでは中心星の進化が円盤進化に重要な役割を果たすこと,中心星の進化の影響を考慮した場合に観測が示唆する円盤の寿命を再現することを明らかにした。この研究は,中心星の進化過程と円盤の進化過程を結合させた画期的な研究である。本研究成果は国際誌にて論文を発表済みである。
さらに,原始惑星系円盤の組成の進化についても研究を行った。近年の惑星形成理論によれば,円盤に含まれる固体成分(ダスト)の合体成長や移動に伴い,円盤の組成は時間とともに大きく変化すると考えられている。ガス惑星に降着するガスの組成も時間とともに大きく変化するため,この理解はガス惑星の形成過程に重要である。我々は,過去の太陽系における円盤の組成進化とそれが太陽に及ぼした影響に着目し,円盤ガスの組成進化モデルと太陽の進化モデルを結合させ数値計算を行った。その結果,太陽の中心部の組成は過去に降着したガスの影響を受けることがわかった。残念ながら現在の観測データでは円盤ガスの組成進化過程を制約するほどの精度がないが,今後ニュートリノなどの観測精度が向上すれば惑星形成過程を制約することにつながると期待される。本研究成果は国際誌へ論文を投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画では,今年度に原始ガス惑星へのガス降着過程の詳細モデルを構築することを目標に掲げていた。原始ガス惑星にガスを供給する原始惑星系円盤の進化過程についてのモデル化が完成し,筆頭著者論文を一報出版し,一報投稿した。初年度は論文化出来る成果が得られるとは期待していなかったため,想定以上の成果が得られたと評価できる。一方で,原始惑星系円盤から原始ガス惑星への降着する際のガスの熱進化のモデル化は未完である。以上を総合し,研究課題はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
二年次は,まず原始惑星系円盤から原始ガス惑星へ降着するガスの熱進化を検討し,降着したガスが原始ガス惑星に注入する熱のモデル化の完成に全力を挙げる。さらに降着した熱の原始ガス惑星内部での分配をモデル化する。これらのモデル化を,すでに開発済みの計算コードに実装し,ガス惑星の長期進化過程を調査する。惑星質量やガス降着率などのパラメータ依存性の調査も行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で複数の国内・国際出張がキャンセルとなったことにより次年度使用額が発生した。次年度以降に出張が可能になった後に積極的に学会発表を行う予定であり,これに次年度使用額を充てる予定である。
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