2021 Fiscal Year Research-status Report
隕石の不均一な衝撃変成作用を考慮した希ガス同位体による衝撃年代測定法の確立
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20K14543
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹之内 惇志 京都大学, 総合博物館, 助教 (60865426)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 衝撃変成作用 / 普通コンドライト / アルゴン年代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では衝撃変成組織とAr/Ar同位体年代の対応を調査するため、様々な衝撃変成度を経験している試料から最適な試料の選定を行い、それらの観察、中性子線照射およびAr/Ar年代分析を進めている。隕石試料に関しては衝撃溶融脈や高圧鉱物を含む隕石や角礫化した隕石、あまり強い衝撃変成を受けていない隕石,角礫化した隕石などを選定している。隕石は研磨し、国立極地研究所に設置してある走査型電子顕微鏡を用いて組織観察を行い,京都大学複合原子力科学研究所において放射化したのち,東京大学にてAr/Ar年代分析を行っている。 角礫化した隕石ではクラスト部とマトリクス部で異なる年代を示しており,より熱に弱い鉱物が含まれているマトリクス部が明らかに若い年代を示した。マトリクス高温部ではクラスト部と同程度の古い年代を示していた。弱い衝撃変成では年代が殆どリセットされないが,角礫岩のマトリクスのような細かい破砕を経験した領域では年代がリセットされやすいことが明らかとなった。強い衝撃変成作用を受け衝撃溶融脈を含む隕石一つについては,詳細な組織観察と組織ごとの試料作成および放射化までは完了しているが,異動に伴う分析頻度の低下から未だAr/Ar年代分析を行えていない。今後より詳細な年代と組織の関係が明らかになることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
隕石の薄片作成、それらの観察、Ar/Ar年代測定を順次進めている。昨年度の隕石の岩石組織・衝撃変成組織観察では、国立極地研究所の走査型電子顕微鏡と電子線マイクロプローブアナライザーを主に使用し、マシンタイムを有効に活用して分析を進めた。Ar/Ar年代分析についても精力的に分析を行い,昨年度は新たに10試料のAr/Ar分析を行うことができた。中性子線を照射した試料を原子炉から回収した。年度の途中で異動となったことに伴い,年度の途中から分析回数を思うように確保できなかったため,分析はやや遅れている。一方で,データリダクションを精力的にすすめることで,衝撃変成組織にみられるバリエーションとAr/Ar年代が記録する年代に一定の傾向がみられることが明らかになってきた。角礫岩ではクラスト部とマトリクス部で異なる年代を示す試料が存在し,一つの隕石内でのAr/Ar年代の不均一を確認できた。衝撃変成と衝撃変成年代との関係について,国内学会の発表1件と国際学会での発表を1件含め意欲的に研究成果の発表を行った。また、国際誌で一編の論文が採択され,次の成果も順調に論文にまとめている。
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Strategy for Future Research Activity |
隕石の観察は概ね完了しているため,放射化・冷却後に回収した試料について順次Ar/Ar年代分析を進めていく。特に,詳細な観察が完了している強い衝撃変成を受けた隕石について,Ar/Ar年代分析を進めていく。また,放射化の際の粒度が年代測定に与える影響についても,試料が回収でき次第評価していく。得られた成果については順次,学会での発表や論文として発信していく。
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Research Products
(3 results)