2020 Fiscal Year Research-status Report
小惑星赤外観測データを用いた微惑星の熱進化・内部構造進化史のモデル化
Project/Area Number |
20K14547
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂谷 尚哉 立教大学, 理学部, 助教 (70795187)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 小天体 / リュウグウ / 熱慣性 / 微惑星 / 熱進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,小惑星リュウグウ表面に存在する高空隙率岩塊と,母天体(微惑星)の熱進化の関係を明らかにすることである.そのために大きく分けて3つの作業を行う計画である.(1) 高空隙率物質の熱伝導率と空隙率の関係を実験的に明らかにすること,(2) リュウグウ表面に分布する岩塊の空隙率を決定すること,(3) その空隙率分布から母天体の熱進化を制約すること.
2020年度は (1) の実験の本格実施に向けた実験設備・システムの構築を開始した.同時に (2, 3) に関連して,はやぶさ2中間赤外カメラ TIR の近接撮像データを解析し,暫定的な空隙率と熱伝導率の関係式に基づいて,リュウグウ表面岩塊の空隙率分布の推定に成功している.特に,これまでの研究で報告された空隙率 30-50% を大きく上回る空隙率 70% 以上の岩塊を発見した.この岩塊は母天体の表層付近でほとんど加熱・圧縮を経験していない物質,すなわちリュウグウ母天体中で最も始原的な情報を保持している物質であると考えられる.また,可視分光データと合わせた解析により,この始原物質が採取したリュウグウのサンプル中に含まれている可能性が高いことを示した.また,母天体の熱進化計算を Neumann et al. (2021, Icarus) の手法で実施し,空隙率分布から母天体のサイズは直径 10 km 以下,形成年代は太陽系誕生から 200 万年後程度であることを示した.本研究成果は Nature Astronomy に投稿し,2021年4月に受理されている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は高空隙率焼結体の作成,および熱伝導率計測を行う予定であったが,2020年4月から所属機関が変更になった(宇宙科学研究所から立教大学へ).同時に,新型コロナウィルスや学務のため,容易に宇宙科学研究所へ出張することが出来なくなってしまったため,立教大学に新規に実験装置を構築するところから始めざるを得なかったため,実験面ではやや遅れている. 一方で,2021年度以降に進める予定であった小惑星リュウグウの赤外観測データの解析,母天体の形成年代・サイズ制約を前倒しで実施した.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後,2021年度中に高空隙率焼結体の作成,および熱伝導率計測実験を行う.岩塊の空隙率の推定,および母天体の熱計算は,2020年度内に大枠を完成させることが出来ているため,実験データを用いたこれらの推定のアップデートを行う.また,今後成果が続々と出てくるであろうリュウグウのサンプル分析の結果を取り込み,母天体の物理進化過程をより制約していく.
|