2021 Fiscal Year Research-status Report
小惑星赤外観測データを用いた微惑星の熱進化・内部構造進化史のモデル化
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20K14547
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
坂谷 尚哉 立教大学, 理学部, 助教 (70795187)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 焼結体 / 空隙率 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小惑星リュウグウ表面に存在する高空隙率岩塊と、母天体(微惑星)の熱進化の関係を明らかにすることである。そのために大きく分けて3つの作業を行う計画である。(1)高空隙率物質の熱伝導率と空隙率の関係を実験的に明らかにすること。(2)リュウグウ表面に分布する岩塊の空隙率を決定すること。(3)その空隙率分布から母天体の熱進化を制約すること。 2021年度は(1)の高空隙率物質の製作を行った。アルミナ製の焼結容器内に粒径5μm程度のガラスビーズを充填し、電気炉にて700℃付近、数時間の加熱を条件を変えながら実施した。その結果、空隙率は 70% 以下で、ある程度のコントロールが可能であることを確認した。一方で、焼結体と容器が固着し取り出すことができない問題が当初発生していたが、数か月時間を空けると容易に取り出すことができることが分かった。 上記に加え、今後の地球外物質サンプルリターンとその物性計測に向けて微少量サンプル (約 5 g)の熱伝導率計測システムの開発を行い、学術論文として発表した。本研究課題で用いる線加熱法による熱伝導率測定は境界からの熱流出が誤差の要因となり、微少量サンプルの場合は特にそれが顕著である。本論文では境界条件を考慮した数値計算を組み合わせることにより、線加熱法でも精度良く熱伝導率を推定することが可能であることを示した。今後実施する焼結体の熱伝導率計測実験へも適用できる手法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究実施にあたり、最も重要な点である空隙率をコントロールした焼結体の作製に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は製作した焼結体の熱伝導率測定を行い、リュウグウ母天体の熱進化過程における空隙率と熱伝導率の関係を明らかにする。所属機関の変更(立教大学からJAXA宇宙科学研究所へ)により、既に構築済みの熱伝導率計測システムを使うことができるため、効率的に実施可能である。 また、2022年度からはリュウグウサンプルの分析結果が多数発表されることが予想される。本研究課題で構築する熱物性データを主軸とした熱進化モデルに対してリュウグウサンプルの分析結果を統合するためのストラテジーを検討する。
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Causes of Carryover |
学会出張等で旅費として計上していた分が新型コロナウィルスの関係でオンライン開催となったため。翌年度の旅費として使用する。
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