2020 Fiscal Year Research-status Report
Physics of typhoon eye diameters from the perspective of atmospheric and computer sciences
Project/Area Number |
20K14554
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
神山 翼 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (40845715)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 台風 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の防災を考える上で,台風の予報は急務の一つである。現状では,台風の「進路予報」は有益な情報が得られる一方,「強度予報」は台風の微細構造に敏感であるため,理論と数値実験の両者において困難を極めている。特に,台風の微細構造として中心的な役割を果たす「台風の眼」を形成する物理メカニズムについては,予測を向上するために本質的な理解を進める必要がある。 本課題では,近年取得可能になった高解像度衛星画像を情報科学的手法を用いて自動で解析し,高精度な「台風の眼の直径」のデータを大量に収集するアルゴリズムを開発した。次に,そのデータを用いて,最低気圧を実現した瞬間の台風の眼の直径を決定する要因を調査したところ,台風の眼の直径の緯度依存性は先行研究と整合的であり,緯度が高くなるにつれて微増することが判明した。また,台風の眼の直径は,第零近似的には直下の海面水温によらず約40kmであるものの,水温が上がるにつれ微増することも判明した。 また,台風の眼の直径についてトレンド計算を行い,近年だんだん眼が大きくなる傾向があったことを示した。このトレンドは,少なくとも最低気圧を実現した瞬間の緯度が北側にシフトした効果や,海面水温が高くなった効果では説明することができない。すなわち,台風の眼の「開眼トレンド」は,境界条件や力学的強制によるものではなく,大気の性質の熱力学的な変化(たとえば大気の鉛直安定度の変化など)によるものであることが示唆される。 また,過去の台風と近年の台風についてそれぞれ平均画像を作成したところ,近年の方が台風の眼が大きくなるだけでなく,台風自体の半径も縮小してきていることがわかった。今後は,この効果も含めて,数値シミュレーション等を用いて物理的メカニズムを調査する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度中に,台風の眼のデータの解析までを概観し終わり,現在は物理メカニズムをシミュレーションで検証するフェーズに入ったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の予定にはなかったが,過去の台風と近年の台風についてそれぞれ平均画像を作成したところ,近年の方が台風の眼が大きくなるだけでなく,台風自体の半径も縮小してきていることがわかった。今後は,眼の直径の変化だけでなく,本体の直径の変化も含めて,数値シミュレーション等を用いて物理的メカニズムを調査する予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行により,当該年度に参加予定だった国際学会等が中止となってしまった。その分の予算は,次年度以降の学会発表や論文発表にあてる予定である。
|