2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14555
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
眞塩 麻彩実 金沢大学, 物質化学系, 助教 (50789485)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロジウム / キレート樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
白金族元素(PGE)の一つであるロジウム(Rh)は、装飾品のメッキや自動車の触媒など、工業的に広く利用されている。自動車が普及し始めた1980年代以降、グリーンランド氷床コア中の粒子状Rh濃度が上昇したことが報告されており、水圏環境においても人為的影響が及んでいることが指摘されている(Barbante et al., 2001)。また、Rh化合物がヒトやサルモネラ菌の細胞遺伝子の損失を誘発することや葦生体内部やオオバアオサ表面に蓄積することなどが報告されている(Bonanno 2011, Turner et al, 2007)。そのため、環境中Rh濃度分布を明らかにすることは人為的な影響を解明するために重要である。しかし、環境水中の Rh 濃度は極めて低いため、Rh 濃度を分析する方法は確立されていない。陰イオン交換樹脂を用いた前濃縮と組み合わせた同位体希釈法は、迅速かつ簡便なために、微量金属濃度の測定に広く利用されている。しかし、Rhは質量数103の安定同位体が1つしかないため、この方法を適用することが出来ず、95%以上の回収率を必要とする検量線法で定量する必要がある。樹脂を用いた固相抽出法では吸着率や回収率が低いといった結果が報告されており、未だに分析方法は確立されていない(Nikoloski et al., 2014; 2015; Liu et al., 2018)。これまでの研究で、吸着剤の検討結果によりHSAB則において、硬い塩基であるメチルグルカミン基を有するCRB-05が高い性能を示した。そこで、本研究ではCRB-05を用いて、環境中の極微量ロジウムを測定するために吸着および溶媒条件の検討を行い、分離前濃縮法の確立を目的とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酢酸溶媒条件での吸着率が最も高い値を示し、0.01 M硫酸溶媒条件が次に高い吸着率をであった。酢酸イオンと硫酸イオンが、Rhに対して二座配位することで、水和する水分子が減少し反応性が上がった可能性がある。一方で、0.01 M硫酸と比較し、0.1 M硫酸では吸着率の低下が見られた。これはCRB-05が有するメチルグルカミン基のプロトン化が進行し、Rhイオンとの錯形成能力の低下に繋がった可能性が高い。また、Rhカチオン錯体とメチルグルカミンのプロトン化ヒドロキシとの静電気反発がおこるため、接触効率の低下に繋がった可能性がある。溶媒によるブランクをより抑制できる0.01M酢酸条件下でその後の実験を行った。カラムの長さについても検討を行い、4cmに比べ8cmでは吸着率が33.3%増加し、吸着率も100%に達した。そのため、8 cmカラムを用いて吸着実験を行った。 さらにRhを樹脂から100%溶離する方法を検討した。酸化力を持つ硝酸では、酸化力を持たない同濃度の塩酸より高い溶離率を示した。Rhと樹脂との結合を切り、溶離するために強い酸化力が必要であると考えられる。最終的に3 M硝酸+3 M過塩素酸で最も高い85.9%の回収率を示した。これは、硝酸と過塩素酸を混合することでより強い酸化力を有することに起因すると考えられる。そのため溶離液は3 M硝酸+ 3 M過塩素酸を最適条件と定めた。 次に溶離液量を増やすことで回収率の上昇を試みた。溶液量の上昇に比例して、回収率が増加し25 mlで回収率が100 %に達した。本方法でのブランク値は0.068 pmol/L、検出限界は0.017 pmol/Lであり、実環境の試料にも適用可能と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した分析方法を実試料に適用していく。実試料を用いると他の共存イオンの影響で回数率が100%とならないことが確認されている。サンプル濃縮後の洗浄条件を検討することによって共存イオンの影響をなくし、実試料分析でも回収率が100%となるような条件を確立する。これまでの実験結果から、塩酸による洗浄は洗浄なしの場合と比較し、大きな差はなかった。また塩酸の濃度依存性も見られず、塩酸は洗浄液に効果的でないものと考えられる。 一方で、硝酸による洗浄は濃度依存性が見られ、濃度低下に従って回収率が増加した。濃度が高いと吸着されたRhが不純物と同時に溶離されたと考えられる。0.01 M硝酸を洗浄液に用いた時の回収率が最も高かったため、硝酸濃度の検討を中心に洗浄条件を確立していく。その後河川水や湖水のRh濃度を分析し、濃度分布を明らかにする。
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