2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the predictability limit of sudden rainfall using high-resolution ensemble forecasts
Project/Area Number |
20K14558
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
本田 匠 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (60756857)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | データ同化 / 豪雨 / 気象レーダー / 雷 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでに得られた成果の取りまとめや追加の開発に注力した。まず、前年度に開発したリアルタイムデータ同化システムの概要と事例解析について、2本の英語論文へまとめ米国地球物理学連合の雑誌へ投稿した。どちらの論文も今年度内に一度改訂を行い、次年度内の受理が期待される。次に、リアルタイムデータ同化システムは東京大学と筑波大学が運用するOakforest-PACS スーパーコンピュータシステム上で開発を行なっていたため、本システムの富岳への移植および富岳上での最適化を他の研究者とともに行なった。特に、行列の固有値演算に関して、理化学研究所で開発されている演算性能の高いアルゴリズムの導入を主導した。さらに、本研究が用いるフェーズドアレイ気象レーダー観測は降雨による減衰の影響が大きいが、その補正はリアルタイムデータ同化システムでは行われていなかった。そこで、降雨減衰の補正を導入し、リアルタイム同化システムによる予測精度が減衰補正の導入によって改善されることを確認した。特に、予報開始直後のわずか数分間で予報のレーダー反射強度が急速に増加する傾向に一定の改善がみられた。
ゲリラ豪雨はときおり活発な雷放電を伴う。そこで、突発的な豪雨に伴って多くの雷が観測された事例のシミュレーション実験を行い、雷観測の効果的なデータ同化手法の開発を行なった。この手法は元々気象レーダー観測の同化へ向け提案されており、将来的にリアルタイムデータ同化システムへ適用することも可能である。得られた知見は、ゲリラ豪雨に関して気象レーダー観測と雷の実観測を同時に同化するシステムを今後開発する際に、非常に有用と期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲリラ豪雨の予測可能性を調べるためには、データ同化を通して高精度な初期値を得る必要がある。そのために必要なデータ同化システムの主要な開発を順調に終え、その成果の取りまとめにも一定の目処がついている。当初の予定になかった減衰補正の導入を行い、降水予測精度の一層の向上が達成できた。また、申請時には開発途上だった雷モデルを用いることで、本課題が対象とするゲリラ豪雨への気象レーダー観測の同化にも応用可能な知見を得ることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本課題が目指す超高解像度アンサンブル予報へ向け、これまでよりも解像度を高くしたデータ同化実験へ向けた検討を開始する。ここで得られるアンサンブル初期値をもとに、さまざまな初期値を用いたアンサンブル予報を行う予定である。研究代表者の異動に伴い利用可能な計算資源に変更が生じるため、下期からの富岳の計算資源獲得を目指しHPCI若手課題ほかへの応募を行う。上期は応募書類の作成のほか、投稿済みの論文の改訂や減衰補正の効果のまとめに注力する予定である。また、HPCI不採択の場合に備え、富岳以外の計算資源でも実行可能な実験設定の検討も行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によって申請時に予定していた国際学会への出張が全て見送りとなった。物品購入や論文投稿料へ使用する。
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