2023 Fiscal Year Research-status Report
Exploring the predictability limit of sudden rainfall using high-resolution ensemble forecasts
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20K14558
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
本田 匠 北海道大学, 理学研究院, 特任助教 (60756857)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | データ同化 / 豪雨 / 予測可能性 / アンサンブル予報 / 気象レーダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、夏季に発生する突発的な豪雨において、初期値の誤差が成長していく過程の解明を目指している。この目的の達成へ向け、高解像度なシミュレーションをわずかに異なるアンサンブル初期値を用いて行い、シミュレーション間のばらつきの成長を調査する。前年度までに、高精度なアンサンブル初期値を得るための数値天気予報システムの開発とその動作確認を行なってきた。
本年度は、開発したシステムを用いてアンサンブル初期値を得た後、そのばらつきの時間発展を高解像度アンサンブル予報を行なって調査した。数値天気予報システムで得られたアンサンブル初期値を用いた場合、約10分程度の予報時間が過ぎると予報誤差が大きく成長し、予報としての価値が失われることが示唆された。これは、現在の数値天気予報システムを用いた場合の実践的な予測可能性限界に相当する。一方で、アンサンブル初期値のばらつきを1オーダー小さくした理想的な条件では、予報時間が20分に達しても予報としての価値が維持されていた。このことは、少なくとも対象とした突発的な豪雨事例においては、理論的な予測可能性限界は実践的な予測可能性限界よりも長く、数値天気予報システムと初期値の改善による予測精度改善の余地が多く残されていることを示唆する。追加実験を行ったところ、風に関係する変数の初期値誤差が降水に関係する変数の初期値誤差に比べて予報誤差の成長に大きく影響すること、予測可能性限界の見積もりがシミュレーションの解像度に依存することが明らかになった。
上記の主要な実験に加え、将来的な派生研究につながる事例解析や他の観測の効果的な利用に関する成果発表、数値天気予報への機械学習の応用可能性に関する基礎的な検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像度なアンサンブル初期値の計算と多数の高解像度シミュレーションを概ね当初の研究計画の通りに実施することが出来た。その経過を国内外の学会で発表するだけでなく、関連する派生研究についても複数の論文成果として発表することが出来た。一方で、高解像度シミュレーションの結果として得られた大容量データの解析に想定以上の時間を要した。そのため、予測可能性限界に関する主要な論文成果の発表を当初の研究期間中に終えることが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
予測可能性に関する主要な論文成果の発表を目指す。その際、必要に応じて追加の解析や実験を行う。また、派生研究に関する成果発表や応用研究の検討を進める。
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Causes of Carryover |
大容量シミュレーションデータの後処理、解析に想定以上の時間を要した。そのため、研究結果を詳細を記述した論文の投稿が遅れ、当初の研究期間中に受理・出版に至らなかった。この成果発表に関わる論文掲載料や論文データの保存、派生研究の検討へ使用する。
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