2020 Fiscal Year Research-status Report
雲微物理解像の雲全体計算に向けた先端的数値計算手法の開発
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20K14559
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松嶋 俊樹 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (00803553)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 雲微物理 / 乱流 / 粒径分布 / ラージ・エディ・シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主に雲微物理の解析方法に関して新規の成果が得られた。 雲粒の粒径分布を予測する精緻な雲微物理法では, 格子内に含まれる雲粒の粒径分布を予測しその解析が行われる。しかし, 格子内での統計から乱流の雲微物理への影響を評価するには注意を要する。これは、ラージ・エディ・シミュレーション(LES)では、格子スケールでの乱流による大気変動は表現されず、格子幅の数倍程度でようやく乱流が表現されるためである。乱流解析については、大気の様々なスケールの変動性を調べる方法(スペクトル解析)がよく知られている一方、雲は局在的で、時間変化が大きい現象であるため、雲微物理の変動性が空間スケールによってどのように変化しているか、どの空間スケールについて影響評価すべきかを決定するのは非常に難しい。 この問題について、雲微物理の統計量(頻度分布)を確率分布間の自然な距離であるWasserstein距離を用いて、異なる解像度間や空間スケール間で統計量を定量的に比較する方法が有用であることを発見した。この方法を用いることで、乱流の雲微物理への影響について調べるためには、乱流が解像される空間スケールより大きなスケールにおいて、雲粒の統計を調べる必要があることを示した。 また、乱流と雲微物理の相互作用が数値モデルでより自然に表現できるように、高解像度用の雲微物理モデルの高速化を行った。不要な計算を除外し、雲微物理モデルを単精度浮動小数点数で計算可能にする工夫を導入することで、全体の実行時間を4分の1にまで短縮することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とは少し異なるが, 本課題の後半に行う予定であった解析法に関する検討を前倒しして行った. 今後のために有用な新たな解析手法を見出すことができ, 本課題全体としてはおおむね順調と判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は大規模計算を可能にする研究開発を重点的に進め, 実際に大規模計算を行うことを目標とする. すでに水滴の持つ情報量の削減と, 大気の内部変動の知見を利用し粒子位置で用いる大気場の必要精度の考察に取り組んでおり, 良い結果が得られつつある. また来年度にかけて, これまでの結果についてまとめる予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍での研究環境の変化で、当初購入する予定であったワークステーションの購入を見合わせたため。今年度中に、少し金額を抑えてデスクトップPCを購入する予定である。
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Remarks |
本課題に関連してVR動画を作成し、YouTubeの理研チャンネルに公開している。コロナ禍で自宅待機を余儀なくされる中で、有用なものとなった。
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Research Products
(3 results)