2021 Fiscal Year Research-status Report
雲微物理解像の雲全体計算に向けた先端的数値計算手法の開発
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20K14559
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松嶋 俊樹 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (00803553)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 雲微物理 / 乱流 / 高性能計算 / ラージ・エディ・シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本課題における主要な目的である、雲微物理解像の先端的数値モデルの開発を目指し、力学コアおよび雲微物理法の両方の研究開発を行った。 力学コアに関しては、従来は水平方向の空間二次元分割によって並列化することが一般的であるところを、空間三次元分割を行って通信量を削減し、より並列度の高い計算が行えるようにした。一方、雲微物理の計算は鉛直方向に計算量が変わるので、空間二次元分割を採用した。また、富岳におけるノード形状を意識したハロ通信を実装し、計算と通信をオーバーラップすることで、超高解像度の数値実験に耐えうるように改良した。 雲微物理に関しては、基盤アルゴリズムに多くの改良を加え、その高速化を行った。例えば速度場の粒子位置への補間に、格子場の発散を保存する二次精度の補間を開発した。また、粒子の初期化に疑似乱数ではなく超一様分布列を用いるようにし、粒子のサンプリングのための提案分布は、予測のばらつきを低減するように設計した。さらに、「富岳」での性能を向上させるため、格子場・粒子のキャッシュブロッキングを導入した。キャッシュブロッキングのために分割された小さな空間を利用して、計算量の劇的削減と最適化を促進する新規の方法を導入した。 これらの研究開発によって、計算のトータルの経過時間を、従来用いられてきた雲のバルク的性質のみを解く方法と同程度にまで高速化することができた。さらに、「富岳」上での大規模実験を行い、全系の約25%を用いて、混合精度演算により7.9PFLOPS、最適化前のボトルネックであった凝結成長の計算では18PFLOPSの速度が得られた。この速度を維持した2m解像度のラージ・エディ・シミュレーションによって、小さな積雲集団を数値計算することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度中の研究開発によって、本課題における主な目標を達成することができた。この過程で、新たに問題となったいくつかの課題も解決できた。したがって、当初の計画以上に進展したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
大規模実験で得られたデータの解析を進め、雲内部の詳細構造や、その空間スケール依存性について調べていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の渦中にあり旅費が必要なかったため。
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Research Products
(1 results)