2022 Fiscal Year Research-status Report
雲微物理解像の雲全体計算に向けた先端的数値計算手法の開発
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20K14559
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松嶋 俊樹 神戸大学, 理学研究科, 特命助教 (00803553)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超水滴法 / 雲微物理 / 最適輸送理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに開発した数値モデルを用いて、様々な条件設定での評価や検証を行った。前年度では、超水滴法の初期化には、エアロゾルの分布関数の他に、超水滴の状態のサンプリングに用いる確率分布が必要となるが、この確率分布の生成に最適輸送理論を応用する方法を提案した。しかし、計算に用いたアルゴリズムは正則化を含むものであったことで、確率分布のテールにおける精度には問題があった。そのため、テールでの精度を担保できる別のアルゴリズムに切り替えることで、精度を向上させた。孤立的な雄大積雲の数値実験において、開発した初期化方法のパラメータを変えたパラメータスイープを行ったところ、超水滴法を用いた場合に見られていた雲微物理特性の大きな空間変動を抑制する効果が得られることが確認できた。 超水滴密度のゆらぎを抑制するため、超水滴を移流させる際に用いる補間法は、超水滴位置の発散が、格子場の発散と整合的であることが必要である。しかし、これまで用いられてきた補間法は高々一次精度であったことで、格子内の渦による輸送は無視されていた。渦の影響が加味される二次精度の補間法を用いて、粒子の初期位置をマーカーとして追跡したとき、一次精度の補間法を用いた場合に数値的影響によって見られた階段状のパターンが抑制されることを示した。 バルク法とビン法との速度比較をより詳細に行ったところ、超水滴法の相対的な利点は、トレーサー移流の計算量の少なさ、コンパクトさ、浮動小数点数のより低精度な表現が可能という点にあることが分かった。半精度浮動小数点数を用いて、超水滴法によるパーセルモデルの数値実験を行い、数値誤差の粒径分布への影響を調べた。その結果、安直な利用は難しいと結論付けた。 前年度に開発した数値モデルの設計の詳細に、以上の知見を加えて論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の枠で開発を予定していた数値モデルは前年度で完成していたが、今年度では、その価値をより確実にするよう様々な検証を行えた。すでに研究計画段階の目的は概ね達成できたと考えているため、進捗は概ね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、投稿した論文の掲載に向けた作業や研究発表が中心となる予定である。余力があれば、次の展開を見据えて計算結果の解析や数値モデルの改良などに取り組みたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍であったことにより研究活動が限定され、旅費の使用額が大きく減少したため。 次年度分は、主に論文発表、研究発表および計算データの保存のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)