2021 Fiscal Year Research-status Report
積雪層内における選択的な水の流れが斜面変動へ及ぼす影響
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20K14562
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大澤 光 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70839703)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 側方流 / 融雪 / 浸透過程 / 選択流 / 積雪底面流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の本年度は、厳冬期から融雪初期の積雪層内の選択的な浸透過程が斜面変動へ及ぼす影響を明らかにするため、積雪調査や地すべり側壁における斜面積雪層への着色トレーサー試験を行うことで浸透過程を明らかにし、またライシメータ観測と流量観測を行うことでそれぞれの融雪に対する流出タイミングや応答量から地表面へ到達する水のスケール依存性について検証する。 新たに伏野地すべり試験地に流量堰を設置し、長期連続観測を開始した。上記の流量を含む水文および地すべり観測データを、インターネットによるリアルタイムモニタリングができるよう環境を整備した。現地における積雪断面観測および積雪トレーサー試験は3月初旬に行った。 厳冬期から融雪初期の融雪イベント時において、地すべり地内の流量は融雪に鋭敏に応答して増加するが、地表面到達水量の応答は鈍かった。このことから、山地斜面の融雪現象の正しい把握には、ライシメータによる局所的な地表面到達水量の観測では不十分で、併せて広域な融雪量を反映する流量計測の有効性が示唆された。またトレーサー試験の結果、融雪初期の積雪層では、積雪層の勾配に応じてキャピラリーバリア等による融雪水の一時的な滞留や選択的な融雪浸透経路が形成されるため、地すべりの地形的特徴に応じて、積雪層内の融雪水が地すべり地内へ効率的に供給される可能性が示唆された。 一方、斜面積雪層内における側方流の発達に関し、国内・外の関連研究を体系的に整理し、総説として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地観測および実験においては順調に進展し、研究成果は蓄積されている。 また当初予定していなかった、斜面積雪中における水の側方流の解明に向けたこれまでの研究と課題を総説としてまとめ、日本雪氷学会誌へ投稿し、査読後受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から積雪層内の氷板が側方流に強く影響を及ぼすことがわかってきた。また、キャピラリーバリア(毛管障壁)による側方流の影響はモデリングにおいて既に組み込まれている実績があるものの、氷板による側方流への寄与に関する研究は国内外でも研究例が少ないため、今後は自然斜面における氷板の空間分布を現地調査・実験を進めていく予定である。 観測された流量の結果を整理する。そして、雪面融雪量を観測データを元に熱収支計算し、地表におけるライシメータと流量の応答、また地中浅層部の土壌水分、地中深部におけるすべり面の間隙水圧変動の観測結果をまとめ、地すべり地において積雪層内の選択的な浸透過程が発生していることを明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度末3月の調査時においてレンタカー借上費およびガソリン費が想定より安価に抑えられたため次年度使用額(B-A)が若干生じた。 次年度は旅費および専門家の招聘費および積雪調査用具の物品費を計上する。
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Research Products
(8 results)