2022 Fiscal Year Research-status Report
小地震の破壊過程を用いた断層状態の情報抽出に基づく地震発生機構の解明
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20K14569
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 圭佑 東北大学, 理学研究科, 助教 (20743686)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 破壊の複雑性 / 放射エネルギー / 地震の自己相似性 / 準繰り返し地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 日本列島島弧地殻内で発生した Mw3.0-7.0の地震の波形を系統的に解析することにより、1700個以上の地震のモーメントレート関数データベースを作成することができた。得られたモーメントレート関数に基づき、各地震の放射エネルギーと破壊の複雑性を定量的に測定した。その結果から、規模の小さな地震の破壊も、大きな地震と同程度の複雑性を持つことがわかった。日本列島地殻内の地震の放射エネルギー・複雑性に、顕著な時空間変化は検出されなかった。ただし、この解析で使用できた周波数帯が比較的狭かったことから、今後、より広い周波数帯の挙動を調べることが重要である。 (2)プレート境界地震の破壊過程の特徴を調べる目的で、宮城沖で 2021年 3月と 5月に発生した M7級地震および、2015年に発生した Mw6.8地震、近傍の Mw6.0-6.4の準繰り返し地震のモーメントレート関数を求めた。その結果から2021年 3月の Mw7.0地震が、2011年M9東北沖地震後に出現した Mw5-6の準繰り返し地震として開始して M7級規模にまで発達したこと、2015年 Mw6.8地震が、東北沖地震以前から繰り返していた Mw6.3地震が近傍のすべり域と連動破壊を起こしたことにより生じたことを明らかにした。更に、高精度震源決定に基づき、より小規模の繰り返し地震を大量に検出した。今後、これらの繰り返し地震の破壊過程の特徴を精査する予定である。 (3) 2020年末から能登半島北東部で活発化している群発地震中で発生した M5.4地震の震源断層と破壊過程を調べた。M5.4地震が、それ以前から migrationを続けている微小地震と同じ断層面の 移動front付近で開始し、migrationの進行方向に破壊伝播したことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本列島島弧地殻内陸域で発生した Mw3.0-7.0の地震の波形を系統的に解析することにより、1700個以上の地震のモーメントレート関数データベースを作成することができた。それらのモーメントレート関数に基づき放射エネルギーや破壊の複雑性を系統的に測定することができるようになった。一方、プレート境界においても、高精度震源決定に基づき小規模の繰り返し地震を大量に検出することができた。内陸域における研究で構築したアルゴリズムに基づき、これら繰り返し地震や前年度に解析したプレート境界地震、スラブ内地震の破壊過程を系統的にかつ詳細に調べることができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2003年と 2011年に宮城沖で発生した M7級地震や、2021年と 2022年に福島県沖で発生した M7級地震とその余震をはじめとしたスラブ内地震についてもモーメントレート関数を求め、内陸域で用いたのと同じ方法により、エネルギー放射・震源過程の複雑性を定量的に評価する。更に、2021年度研究で求めた日本海溝プレート境界地震のモーメントレート関数についても同様の解析を行う。その結果を用いて、内陸地震、プレート境界地震、繰り返し地震、スラブ内地震の破壊過程の特徴の共通点と相違点を見出す。
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Causes of Carryover |
論文出版費が想定とやや異なったため。来年度の論文出版費に使用する。
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