2021 Fiscal Year Research-status Report
アニール技術を応用したジルコンの高確度U-Pb年代測定法の確立
Project/Area Number |
20K14573
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅沼 尚 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90852525)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ジルコン / 局所U-Pb年代測定 / 高確度化 / アニール処理 / メタミクト化 / ファラデー検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去の地球現象を読み解く上で、岩石や鉱物が記録する地質年代情報は最も重要な指標の一つといえる。そこで、本研究はジルコンという鉱物粒子を対象とし、アニールと呼ばれる焼きなまし処理を組み合わせた高確度LA-ICPMS年代測定技術の確立を目指す。本年度の研究実施状況として、ジルコンのアニール処理の評価を目的としたU-Pb質量分析技術の改善に取り組んできた。 本研究では、昨年度から継続して10^13Ω抵抗器を搭載したファラデー検出器を用いることで、高精度同位体計測技術の開発に取り組んできた。これにより従来検出器に比べて一桁以上も微弱なイオン信号を検出すると共に、レーザーアブレーションによる局所サンプリング技術との連結も可能となった(昨年度、国際誌へ成果を報告済み)。そして、本分析技術を局所領域のU-Pb年代測定へと応用することで、標準ジルコン試料(Nancy 91500)の206Pb/238U及び207Pb/206Pbの測定精度が0.1%と0.2%まで向上し、世界最高レベルでの分析精度の達成に成功した。また、その他の標準ジルコン(Plesovice、TEMORA、GJ-1)の分析結果とも比較することで、年代データの妥当性についても確認できた。これにより、年代分析結果に~数%レベルで影響を及ぼすと考えられるアニール処理/メタミクト化を正確に評価することが期待される。また、このような10^13Ω抵抗器を用いた分析技術は同位体計測一般の高確度化につながり、本年度、筆頭著者としてその成果を国際雑誌へ報告できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より予定していた装置/測定法の抱える分析確度の評価を行い、試料導入部の改善点が新たに明らかとなった。一方で、ラマン分光分析によるメタミクト化程度の定量評価にはもう少し時間がかかる見通しである。以上、当初の予定の1/2まで目標が完遂でき、筆頭著者として国際雑誌へ成果発表した事から上記の自己評価をするに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度より達成できなかったラマン分光分析を用いたアニール後のジルコンの結晶性評価を行う。課題は時間とともに分析結果がドリフトしてしまう事であり、当初考察していたよりも細かく校正物質の挟み込みを行う必要がある。 また、さらなるU-Pb年代分析の高確度化を視野に入れた際、試料導入部の改善が必要となった。主な改善点はレーザー照射部と質量分析計の位置関係にあり、両者の距離(3m)が長いため安定したエアロゾル導入が阻害されていた。今後はこのような装置配置に加えて、サンプルセルの形状についても見直していく。その後、アニール処理したジルコン試料の分析に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
当初は旅費として使用予定であったが、3月の新型コロナウイルスの状況を鑑みて断念した。来年度は旅費として使用予定である。
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Research Products
(5 results)