2021 Fiscal Year Research-status Report
2011年東北沖地震に伴う断層すべりの時空間発展の高解像度推定
Project/Area Number |
20K14588
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
富田 史章 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (20838916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地殻変動 / 逆計算 / 2011年東北沖地震 / 地震サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯のプレート境界における巨大地震サイクルに伴う断層すべりの時空間発展を高い解像度で推定することは,プレート境界における力学的特性を把握する上で極めて重要である.本研究では,巨大地震後の地殻変動観測データが過渡的な現象である粘弾性緩和を介して過去の断層すべりに関する情報を有していることに着目し,2011年東北沖地震における 地震間・地震時・地震後の地殻変動観測データを統合して解析(粘弾性インバージョン)することで,高解像度の断層すべりの時空間発展の推定に取り組む.本年度では,昨年度に大枠を開発したReversible-jump MCMC法による断層すべり推定手法を論文として取りまとめ,粘弾性インバージョンに適用できる状態に整えた.論文として取りまとめた内容では模擬データ,及び2011年東北沖地震時変位の実データに対してに本手法の適用を行った.これらに加え,南海トラフにおける固着分布推定にReversible-jump MCMC法を活用し,地震間の実データに対しても問題なく本手法を適用可能であることを確かめた.更に,地震サイクルにおける断層すべりの時空間発展を推定する際に活用する測地観測データの整理を行った.具体的には,陸上GNSSデータ,及び海域のGNSS音響観測データを用いて,余震・GNSS共通誤差・周期変動等の系統的な誤差要因を取り除く手法開発を行い,実際の適用に資する精緻なデータセットを揃えた.一方で,本研究における推定において重要となる東北沖における3次元粘弾体を考慮した変形を表現するグリーン関数については,試行錯誤を重ねており,現在その精査を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度では,解析の核となるReversible-jump MCMC法による断層すべり推定手法をまとめ上げ,入力となる測地観測データについても概ね整えた.一方で,昨年度終了時からの課題であった粘弾性グリーン関数についてはその準備が遅れている.研究課題採択時に予定していた計算環境が運用機関のネットワークセキュリティの問題で使えない状態が継続していた事に加え,計算手法の活用自体が運用機関の都合により困難となってしまったためである.現在,予定よりも簡易な構造を仮定した粘弾性グリーン関数の計算の試行錯誤を行っている.この問題については,他研究機関との研究協力による粘弾性グリーン関数の計算の実施等も視野に入れながら,迅速に研究を進められるように取り組んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,東北沖における粘弾性構造を考慮した変形を表現するグリーン関数の作成を行う.その後に,Reversible-jump MCMC法による断層すべり推定手法を活用して,東北沖における断層すべりの時空間発展を推定する.粘弾性グリーン関数については現在試行しているやや簡易な粘弾性構造を仮定した計算を考えているが,計算速度やより現実的な粘弾性構造を考慮して,他研究機関との研究協力による粘弾性グリーン関数の計算の実施も視野に入れている.なお,グリーン関数の作成時期が遅れる場合,本年度実施した測地観測データセットを最新の状態に更新を行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスによる影響のため,計画していた旅費を使用していないために次年度使用額が生じた.次年度では研究打ち合わせ及び学会発表等が多くなる見込みであり,それらで差額を使用する見込みである.
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Research Products
(5 results)