2020 Fiscal Year Research-status Report
Macromolecular structures of modern and fossil acritarchs: Exploration of chemotaxonomic information
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20K14591
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
安藤 卓人 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 特任助教 (30852165)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクリターク / 中海 / 堆積物 / プラシノ藻 / 繊毛虫 / 環境DNA / バイオマーカー / Micrhystridium ariakense |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「ゴミ箱行きの分類群」とされてきたアクリタークの形成した種の分類群や生態的特徴を理解することで,過去の生物相・生態系像をより鮮明にすることを目的としている。形態的特徴で分けられたグループのうち,突起物があるAcanthomorphアクリタークと球状で突起物がないSphaeromorphアクリタークは幅広い地質時代の堆積物(岩)から産出されている。 令和2年度は,“現生”アクリタークの検出を目標とし,島根大学・エスチュアリー研究センターの中海・宍道湖定期調査に同行し,堆積物の採取を行なった。堆積物表層からは複数種の現生アクリタークが確認され,特に中海では褐色・無色のSphaeromorphアクリターク,分類上はAcanthomorphアクリタークに分類されるが突起物が非常に短いMicrhystridium ariakenseが多く観察された。美保湾周辺の堆積物にはその他のAcanthomorphアクリタークも観察されたが産出はまれであった。 一方,赤外分光器やラマン分光器を用いた高分子分析については,前処理法の検討を主に行なった。特に現生種のアクリタークの有機質膜・殻の高分子を精度よく分析するためには原形質の除去が不可欠であった。また,化石アクリタークの観察・記載およびピッキングに有用な蛍光観察用のUV発生装置を購入した。以上の成果について,主に国内学会において発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季に乗船予定であったIODP Exp.388「Equatorial Atlantic Gateway」が当面延期となり,同航海で採取された化石アクリタークを用いた研究は困難になったものの,現生アクリタークに関しては,中海・宍道湖から多くの種が観察できた。一方で,アクリタークの形態観察については,他のパリノモルフの形態観察に倣って行なう必要があり,共同研究者である長崎大・松岡 數充名誉教授の指導のもと,顕微鏡観察法の習得をした。 一方,高分子分析の前処理については,冷凍粉砕を数回行なうことで上手く原形質を除去できるが,膜や殻自体も壊れてしまうため,事前に形態を観察する必要があることが分かった。分析装置については,研究活動スタート支援「渦鞭毛藻赤潮指標の開発と堆積物への応用:赤潮発生メカニズムの解明研究課題」で検討を行なった顕微ラマン分光器,およびATR付き顕微赤外分光器が有用であることが明らかになった。また,DNA分析についても依頼先がみつかり,今後は共同で研究を進められる。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA分析によって,中海表層堆積物で多産するMicrhystridium ariakenseの起源生物を解明する。M. ariakenseは地質時代でも濃集層準が確認されており,起源種が特定されれば大きなブレイクスルーになる。同様に多く観察される無色・褐色の球形アクリタークも単離・起源推定していく。アクリタークの形態観察については電子顕微鏡を用いて詳細に行なっていく。また,DNAが保存されてない化石への応用をするために,原形質除去法を確立させ,各種分光分析による高分子構造に基づいた起源生物指標の提案を行なう。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響で国外における学会参加・実験が困難であったため。 令和3年度以降の海外渡航費,不可能な場合は分析用機器・消耗品の購入費として使用する。
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