2021 Fiscal Year Research-status Report
Macromolecular structures of modern and fossil acritarchs: Exploration of chemotaxonomic information
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20K14591
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
安藤 卓人 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 特任助教 (30852165)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクリターク / 水生パリノモルフ / 中原生界 / グリーンランド / アキネート / Micrhystridium ariakense |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,アクリタークの形成者の所属する分類群や生態的特徴を理解することで,過去二十億年の生物相・生態系像をより鮮明にすることを目的としている。特に形態的特徴で分けられたグループのうち,球状で突起物がないSphaeromorphアクリタークと突起物があるAcanthomorphアクリタークは表層堆積物を含む幅広い地質時代の堆積物(岩)から産出されている。 令和3年度は,令和2年度に引き続き,現生アクリタークの収集をするために,島根大学・エスチュアリー研究センターの中海・宍道湖定期調査に同行して堆積物の採取,広域調査では代表研究者が主体となり周辺河川の懸濁粒子の採取を行なった。 また,継続して赤外分光器やラマン分光器を用いた高分子分析の前処理法の検討を行なった。原形質の除去やパリノモルフ表面のアモルファス有機物の除去が不可能であったが,超音波ホモジナイザーの導入によって,分離に成功している。 加えて,Sphaeropmorphが主体であった約15億年前の真核生物進化の黎明期である中原生代のアクリタークについて,高分子分析による現生アクリタークとの比較を行なった。同時に,現生アクリタークと熱による続成過程を受けた化石アクリタークの高分子を直接比較するために,セルロース,キチン,グルテンを用いた熱熟成シミュレーション実験を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表層堆積物中において中海でメジャーであった無色透明のSphaeromorphアクリタークについては,夏季の中海・米子湾奥部で懸濁粒子中に濃集していることが分かり,渦鞭毛藻などのシストであることが推測された。また,FTIR分析とラマン分光分析から,これらのアクリタークは多糖類で構成されていることが明らかになりつつある。 AcanthomorphアクリタークのMicrhystridium ariakenseについては,白亜紀海洋無酸素事変1a層準で算出するLophosphaeridium(Ando et al., 2022)と形態が類似しており,環境指標としての利用が期待できる。しかし,単離手法の開発は進んだもののルーチン分析にいたるには不完全であり,今年度は現生アクリタークのDNA分析は断念した。 化石アクリタークとしては,グリーンランド北西部のQaanaaq層から産出したLeiosphaeridiaやSynsphaeridiumをはじめとした中原生界アクリタークのFTIR分析を行なうことにより,高分子成分を比較した。 また,セルロース,キチン,グルテンの真空電気炉を用いた熱分解シミュレーション実験を島根大学・三瓶 教授と共に進めた。これらの多糖類・糖タンパクは250-300℃で大きく構造が変わるものの,熱分解生成物からも元の高分子構造が推定可能であることが分かった。 以上の成果について,国内外の学会やシンポジウムにおいて発表を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにアクリタークの単離手法がほぼ確立し,多くの濃集試料の確保もできたので,現生・化石アクリタークともに出来るだけ多くの試料について,電子顕微鏡を用いた微細構造の観察や高分子分析をすることで,形態学的・化学分類学的な比較を進めていく。また,現生アクリタークのDNA分析についても,時間の許すかぎり積極的に行なっていきたい。熱熟成シミュレーション実験については,実際に現生アクリターク試料を用いた実験を進めていく。 最終年度であるため,国内外での学会発表,一部成果について論文執筆していく。
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Causes of Carryover |
昨年度同様,コロナウィルスの影響で国外における学会参加・実験が困難であったため。 令和4年度の海外渡航費,不可能な場合は分析用機器・消耗品の購入費として使用する。
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