2020 Fiscal Year Research-status Report
エディアカラ紀動物進化を支配した酸化還元境界変動の解明
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20K14595
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
古山 精史朗 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (60760527)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 南中国エディアカラ系 / 無機炭素同位体 / 有機炭素同位体 / ストロンチウム同位体 / 同位体層序 / 層序対比 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,エディアカラ型動物が酸素および有機物摂取の容易な酸化還元境界周辺に生息していたことを明らかにする.そのために南中国の調査候補地において,堆積環境を明らかにする必要があるが,2020年度はCovid19の蔓延により中国へ渡航できなかった.そこで,既に取得済みの貴州省Beidoushan地域のサンプルを使用し,岩相層序の作成,無機・有機炭素同位体層比およびストロンチウム同位体比の測定を行った.これにより2020年度のもう一つの実施項目である,同位体層序を用いたエディアカラ紀海洋の時空間的枠組みの構築を重点的に実施した.なお,このBeidoushan地域もまたウェンアン動物群と呼ばれる化石産出で知られており,本研究目的に十分合致する.本研究ではBeidoushan地域のエディアカラ系を,岩相と無機炭素同位体変動に基づき,下位からDolostone unit,Thick phosphate unit,Lower alteration unit,Upper alteration unitの4つに区分した.これらのうち,化石はLower alteration unit,Upper alteration unitから産出する.3つのプロキシについて作成した同位体層序を,南中国エディアカラ系の模式地である三峡地域のものと対比した.その結果,Thick phosphate unitは,三峡地域でエディアカラ紀中頃の氷期「ガスキエス氷期」とされている層準と対比できる可能性がある.さらに,Upper alteration unitは世界中のエディアカラ系で認められる汎世界的な無機炭素同位体の負異常「シュラムエクスカーション」と対比できると考えられる.この層序対比結果は,ウェンアン動物群の出現・放散時期の制約に貢献するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Covid19により,2020年度は岩石試料採取のための中国渡航ができなかった.しかし南中国内で対象地域を変え,既に採取済みの岩石試料について当初予定していた各種同位体分析を行なった.その結果,Beidoushan地域と三峡地域とを大まかに対比することができ,Weng'an動物群の出現・放散時期を制約することができた.このように対象地域の変更はあったものの,おおよそ期待していた通りの成果を得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は,まずBeidoushan地域のストロンチウム同位体の測定数を増やすことで同位体層序の分解能を向上させ,より正確な層序対比を目指す.さらに2021年度に実施予定の希土類元素の定量を,Beidoushan地域の試料を対象に実施する.またCovid19や国際情勢の影響で中国への渡航は難しいが,海外渡航制限自体が緩和された場合,古海洋の酸化還元状態と動物進化の関係解明に適した別の地域(例えばオーストラリア,モロッコなど)を対象に調査を行い,各種同位体層序作成・堆積相解析・希土類元素パターン分析を実施する.海外渡航が難しい場合,既に取得済みの試料を用いて,硫黄同位体など当初の計画にはないが酸化還元状態の検討に適したプロキシを追加し,古海洋の酸化還元状態を明らかにする.
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