2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14599
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 佩瑩 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00862062)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リボザイム / ペプチド / 液-液相分離 / 生命の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の生命では複数の分子種(核酸,タンパク質)の協調によって精妙な遺伝子発現機構を構築されているが,初期生命が如何に誕生し,そのような複雑な系に進化してきたのかという生命を理解するための本質的な問いの答えは未だに得られていない.現存生命においてRNAが遺伝情報の保存と同時に触媒機能を担いうることから,RNAから進化が開始したという有力な仮説(RNAワールド仮説)が立てられ,その後,RNAとタンパク質の共進化によりRNAの触媒機能の多くがタンパク質へ受け渡されたと推測されている.しかし,RNAとタンパク質の共進化がどのように進んできたのかについてはまだ分かっていない.そこで本研究では,RNA酵素(リボザイム)をモデル分子として用い,単純なペプチドを加えることにより複数分子種の環境におけるRNA自己複製システムの構築を目指し,初期生命においてRNA・ペプチド共進化の進行を理解する.そのために,自己集合ペプチドの構造体形成を行うことにより,リボザイムの活性向上・区画化を試みる. 本年度は,正電荷をもつペプチドを用い,RNA・ペプチド間の静電相互作用による液-液相分離(LLPS)構造体の形成を行った.それにより,リボザイムを有効的にLLPS構造体内に閉じ込め,濃縮することができた.この様なペプチド構造体のリボザイム活性への影響を調べ,構造体内におけるリボザイムの活性がリボザイム自身の安定性に関わることを示す結果が得られた.安定なリボザイムはペプチド濃度が若干高い条件下でも活性を示し,正電荷ペプチドとの絡まりによる活性低下を解消できることを示唆された.現在までリボザイムの活性を上昇させるような構造体は得られていないが,今後はリボザイムの活性・安定性を向上させるLLPS構造体を形成するペプチドを探索する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は(1)ペプチド構造体の構築と(2)構造体におけるリボザイムの活性を調べることを目標とした.これまでの研究でリボザイムの活性を上昇させる正電荷ペプチド(オリゴリジン)を構造化することにより,リボザイムとペプチドの絡まりを抑制し,リボザイムの活性を向上させると考えた.そこで,(1)ではペプチドのLLPS構造体の形成条件を検討し,さらにリボザイムの濃縮効果の確認を行った.その結果,構造体内に閉じ込められたリボザイムの数は構造体の電荷及び溶液の塩濃度に依存することが分かった.(2)では,構造体・溶液中におけるリボザイムの活性をそれぞれ調べた.さらに,サイズ・安定性が異なるリボザイムを用い,LLPS構造体のリボザイム安定性・活性への影響の確認を行なった.現在までリボザイムの活性を著しく上昇させるような構造体は得られていないが,安定性の高いリボザイムはより高いペプチド濃度条件下でも活性を示すことから,正電荷ペプチドとの絡まりを解消できたことを示唆された.以上の成果は,今後のペプチド設計及びリボザイム自己複製に適する構造体の構築に重要な参考になり,本年度の目標に達成できたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのLLPS構造体を形成するペプチドを基に,リボザイムの活性を上昇させるようなペプチドの設計を進める.具体的には,LLPS構造体を作るためのペプチドの結合部位の配列を調整し,リボザイムとの絡まりを有効的に抑制する.また,構造体の電荷制御を行うことによって,更なるリボザイムの濃縮効果及び活性を上昇する. さらに,その様な絡まり抑制効果のあるペプチドの構造体を利用し,RNA生命進化においてリボザイムの自己複製過程を繰り返すことを試みる.リボザイム自己複製の繰り返しにおいてペプチドが変性したリボザイムの巻き戻しに阻害するかを確認する実験を行い,リボザイムの巻き戻しに阻害しないかつリボザイムの活性を促進できるペプチドを探索する.これまでアミロイド構造に集合するペプチドとリボザイムの研究から,リボザイムの折り畳みに悪影響が少ない自己集合ペプチドが得られていて,その様な配列をLLPS構造体形成ためのペプチドに導入することにより,複数分子種の環境におけるリボザイム自己複製系の繰り返す過程の実現を目指す.
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Causes of Carryover |
今年度は,これまでの研究でリボザイムの活性を上昇させる正電荷ペプチド(オリゴリジン)の構造化に注力し,LLPS構造体の形成条件を詳しく検討し,異なる条件下で形成された構造体によるリボザイムの活性への影響を調べてきた.さらに,リボザイムの折り畳みを抑制する効果が少ない自己集合ペプチドが得られている.これらの理由によって,当初予定したペプチド配列の設計・合成にかかる試薬費が減った.また,新型コロナウィルス感染症の影響により,参加予定の学会が中止され,その旅費が次年度に繰り越された.次年度は,LLPS構造体を形成するためのペプチドにアミロイド構造に集合するペプチド配列を導入するため,未使用額は次年度のペプチドなど試薬の購入に利用する.
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