2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14599
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
李 佩瑩 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (00862062)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自己集合ペプチド / リボザイム / 生命の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代の生命では,核酸やタンパク質などの複数の分子種の協調によって精妙な遺伝子発現機構を構築されている.しかし,初期生命が如何に誕生し,そのような複雑な系に進化してきたのかという生命の本質的な問いにはまだ答えが得られていない.現存生命においてRNAが遺伝情報の保存と同時に触媒機能を担いうることから,RNAから進化が開始したという「RNAワールド仮説」が立てられた.しかし,その後,RNA自身の進化・タンパク質との共進化がどのように進んできたのかについてはまだ分かっていない.そこで本研究では,RNA酵素(リボザイム)をモデル分子として用い,それに単純なペプチドを加えることにより,複数分子種が存在する環境下でRNA自己複製システムの構築を目指し,初期生命におけるRNA・ペプチド共進化の進行を理解する.そのために,自己集合ペプチドの構造体形成を行うことにより,リボザイムの活性向上・区画化を試みる. 本年度は,正電荷部位と疎水性配列を持つ自己集合ペプチドの更なる設計を行った.それにより,高塩濃度だけではなく低塩濃度下でもペプチドの自己集合より形成された構造体の表面でRNAポリメラーゼリボザイム(RPR,リボザイムの一種)を濃縮・活性化することに成功し,様々な塩濃度環境に適応させることができた.さらに,RPR自己複製に向けて,自己集合ペプチドと共に(合成された産物をテンプレートから剥がれ出し合成反応を繰り返すための)加熱プロセスを行うことを試みた.ペプチドの自己集合により,加熱されたRPRの活性を保つことに成功した.その様なペプチドはリボザイムとの絡まりを抑制する効果を持つため,加熱過程においても変性したリボザイムの折りたたみ過程を阻害しない可能性が考えられる.自己集合ペプチドはRNAの区画化・活性化機能を持つ同時に,さらにRNAの自己複製をサポートすることができることで,RNA生命進化を有利な方向に導く可能性を示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,高塩濃度下でRPRを活性化する自己集合ペプチドを基に,新たな自己集合ペプチド配列の探索を行い,低塩濃度下でもRPRを活性化できるペプチドを発見した.それにより,RPRを様々な塩濃度条件に適応させることに成功した.それらのペプチドを利用し,これまでのペプチドとの絡まりによって加熱したRPRが活性を失ってしまう問題を解決し,RPR活性化と自己複製のサポートを両立させることに成功し,本年度の目標を達成したと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究が順調に進展してきたが,本研究の目的をより精緻に達成するため,補助期間を延長させた.今後は引き続き,自己集合ペプチドの存在下でRPRの加熱実験を行い,加熱温度・ペプチド種類・塩濃度などによるペプチド凝集体表面におけるRPRの挙動(変性・折りたたみ)の変化をさらに調べ,自己複製過程の繰り返しを行う.
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で,海外で開催される国際学会にオンライン参加することとなった為,その旅費が次年度に繰り越された.その差額に関しては,次年度に行うリボザイム自己複製の繰り返し実験の実施において,RNAやペプチドなどの試薬の購入に充てる予定である.
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