2020 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格構造の特徴に基づくキリンの「ネッキング行動」の起源の解明
Project/Area Number |
20K14600
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
郡司 芽久 筑波大学, システム情報系, 研究員 (80833839)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | キリン / ネッキング / 進化生物学 / 比較形態学 / 三次元形態解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
キリンの長い首の進化要因については、自然選択説や性選択説に準拠する仮説がいくつか提示されているが、未だ統一的な見解が得られていない。特に性選択説の根拠となる、キリンのオス特有の種内闘争行動「ネッキング」については、いつ・どういった種で獲得されたのかが不明であり、この行動が首の長さに与えた進化的な影響については慎重な議論が必要である。本研究では、現生キリンの首の筋構造および骨格形態を詳細に観察し、ネッキングと密接に関連した形態形質の特定を行い、得られた知見を化石に応用することで、絶滅したキリン類がネッキングを行なっていたかを明らかにすることを目指す。 本年度は、COVID-19の感染拡大に伴い海外出張が禁止されたため、国内の博物館に収蔵されているキリン科動物の骨格標本を観察し、骨格の形態データの取得に取り組んだ。また、動物園から献体されたキリンの遺体標本から、頸部筋肉の構造の記載を行い、骨格形態と筋構造の関連性について調査を進めた。 さらに、遺体標本から頸椎関節に存在する椎間板を採取し、力学的特性の調査も行った。これは当初の計画にはなかった解析ではあるが、キリンの椎間板には高い衝撃吸収性があり、ネッキング時に頸部関節に加わる衝撃を吸収する役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、当初、ドイツ・イギリスの博物館に保管されている絶滅したキリン科動物の化石標本の三次元形態データを取得し、応力解析や筋構造の復元に取り組む計画であった。しかしながら、COVID-19の世界的流行に伴い、海外の博物館調査を行うことが不可能となり、現生キリン科動物を対象としたデータ収集・解析のみにとどまっている。 一方で、コロナ禍においても、現生キリン科動物の骨格データ・筋データ・生体組織の採取は行うことができ、ネッキングに関連した形態学的特徴・生体組織の解析は一定の成果が得られつつある。 また、今回得られた成果の一部を哺乳類学会・動物学会にて発表する予定であったが、COVID-19の流行により両学会が中止となったため、研究成果を発表することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19の感染状況の改善が期待できない場合、2021年度・2022年度も海外調査を行うことができない可能性が高い。化石標本の解析を主軸とした研究計画を一部見直し、現生種の骨格標本、遺体標本を使用して日本国内で進められる研究へと計画の見直しをする必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い、本年度は、当初の計画にあった国内出張および海外出張をすることができず、骨格の3次元形態データを取得する基盤を形成するのみにとどまった。次年度も海外出張を行うことは困難な状況が続いているため、当初の予定を変更し、国内博物館に収蔵されている骨格標本および遺体標本を対象とし、ネッキングに関連した筋肉・生体組織の記載・解析を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)