2022 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格構造の特徴に基づくキリンの「ネッキング行動」の起源の解明
Project/Area Number |
20K14600
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
郡司 芽久 東洋大学, 生命科学部, 助教 (80833839)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 筋骨格システム / 古生物 / 進化 / キリン |
Outline of Annual Research Achievements |
キリンの長い首の進化要因については、自然選択説や性選択説に準拠する仮説がいくつか提示されているが、未だ統一的な見解が得られていない。特に性選択説の根拠となる、キリンのオス特有の種内闘争行動「ネッキング」については、いつ・どういった種で獲得されたのかが不明であり、この行動が首の長さに与えた進化的な影響については慎重な議論が必要である。本研究では、現生キリンの首の筋構造および骨格形態を詳細に観察し、ネッキングと密接に関連した形態形質の特定を行い、得られた知見を化石に応用することで、絶滅したキリン類がネッキングを行なっていたかを明らかにすることを目指す。本年度は、昨年度に続き、3Dスキャナー「EinScanPro」を利用して現生種の骨格に関するデータ収集を進めた。動物園からの献体を活用して、筋肉構造の記載・腱や靭帯といった軟部組織の収集・計測をおこなった。得られた結果の一部は、11月に高知で開催された日本比較生理生化学会にて発表した。 これらの当初計画していた研究活動に加え、本年度は、偶蹄類25種・奇蹄類6種の頸部CTデータを活用し、頸部関節部にある軟部組織「椎間板」の計測にも取り組んだ。解析の結果、椎間板の幅・高さ・厚さは体サイズと強い相関があること、キリンは偶蹄類全般の傾向からは外れることなどが明らかとなった。椎間板は化石に残らない部位ではあるが、首全体の長さに大きな影響を与えるため、古生物の復元においても重要な形質とされている。本成果は当初の計画とは外れるが、絶滅したキリン類の首の柔軟性を理解する上で重要な知見につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始の初年度(2020年度)に、新型コロナウイルスの感染拡大により研究活動が大幅に制限されたことの影響を受け、当初の予定より計画が全体的に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の延長を行い、2023年度に海外調査を行い、化石種の計測を行うこととした。また、これまで収集したデータについて、次年度中に論文としてまとめ、発表を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、全体的に計画の進捗が1年程度遅れ、化石種での解析にまで至っていないため。また、2022年度に開催予定であった国際学会が2023年度開催となったため、次年度へ繰越が生じた。
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Research Products
(2 results)