2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of high strength and elongation structural material for cryogenic temperature used by characteristic improvement of cryogenic tensile properties by heterogeneous phase structure.
Project/Area Number |
20K14605
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古賀 紀光 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30735923)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 構造材料 / 複相組織 / 低温引張特性 / 変形・破壊 / 積層材 / 相応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
フェライト(bcc相)+オーステナイト(fcc相)二相鋼において8 Kの極低温環境下でも優れた強度と延性を示すことが明らかとなった。本成果は、異相を混在させることによる特異な低温引張特性の発現が極低温環境下でも生じることを意味しており、二相鋼が次世代型核融合炉の構造部材として応用できる可能性を示す。8 Kの引張試験においては局所変形の発生に伴う局所的な温度上昇によって機械的性質が変化することが示された。これは、金属材料の極低温変形における基礎的な知見を与えるものである。 二相鋼の引張その場中性子線回折より低温下における両相の担う応力を測定した結果、フェライト相の応力増加が顕著であったが、オーステナイト相も温度低下により強度が増加していた。これは、二相鋼中のオーステナイトが通常のfcc金属と異なり機械的性質の温度依存性が大きいことを示唆する結果である。 純Fe(bcc相)+純Cu(fcc相)積層材を作製し、機械的性質の温度依存性を評価した。積層材は、純Fe+純Cu合金材と同様に低温下で優れた強度-延性バランスを示すことが明らかとなった。さらに、単相材においては純Feが低温下で脆性破壊が生じたのに対して、積層材では純Fe層は延性的に破壊していた。ひずみ分布解析の結果より純Fe層周辺の純Cu層においてひずみが高く、純Fe層内の応力集中を周辺の純Cu層が緩和していることが示唆された。その結果として、積層材中の純Feは延性的に破壊したと考えられる。つまり、低温下において延性に富む純Cuが純Feに隣接することが積層材の優れた低温引張特性の発現要因と考えることができる。よって、両相が隣接するようにランダムに分布させることで低温におけるbcc相の脆性破壊をより抑制できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では二相鋼において各相の分布状態を制御する予定であったが、作製が容易な純Feと純Cuを用いたことで、各単相材の機械的性質の温度依存性とそれらを複相化した際の機械的性質の温度依存性を想定よりも早く評価することができた。その結果より複相化によって低温下において脆性的に破壊するbcc相が周辺のfcc相がひずみを担うことで脆性破壊が抑制されることが明らかとなった。つまり、分布状態は両相が隣接するようにランダムに分布させることが良いことが明らかとなり、当初計画は達成されたといえる。 さらに、令和3年度実施予定であった二相鋼の引張その場中性子線回折実験を実施しており、温度低下に伴い各相が担う応力が増加することを明らかとしている。本結果は、令和3年度の達成目標である複相化による機械的性質改善メカニズムの解明の一助となる。よって、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従い低温における異相混合による特異な機械的性質の改善メカニズムをマルチスケール変形・破壊解析を用いて解明する。また、これまでに二相鋼の結晶粒径の微細化によって低温引張特性が改善することが明らかとなっているため、そのメカニズムの解明についても同手法を用いて試みる。最終的な目標である高強度・高延性低温用構造材料の創製における制御因子の抽出を令和3年度に実施し、令和4年度にその作製を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染拡大の影響で出張が不可となったため、次年度使用額が生じた。本研究課題に関連して招待講演を受けたため、その旅費に補填する予定である。
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