2020 Fiscal Year Research-status Report
情報科学を材料プロセスに取り入れた耐熱高エントロピーセラミックス構造材料の創生
Project/Area Number |
20K14613
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
新井 優太郎 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 助教 (70844439)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ハイエントロピーセラミックス / セラミックス複合材料 / 計算熱力学 / 溶融含浸 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶融含浸で用いる溶融金属の組成は熱力学データベースソフトであるFactSage7.3(Polytechnique Montreal (CRCT) and GTT-Technologies)を用いた。合金は「炭素と反応しUHTCを形成」,「これまで酸化皮膜として耐熱材料に用いられてきたSiO2を形成しない」,「1750℃程度で溶融する」,「炭素と反応して形成したUHTC及び残留金属は含浸前の合金の融点より高い」という条件からZr-Ti-Moを選択した。計算により求めたZr-Ti-Moの1750℃におけるZr-Ti-Moの三元系状態図から,1750℃以下で液相を形成するためには0 < Mo < 40 (at%)かつZr < 85 (at%)であることがわかった。以上の結果から実際に,Zr-37.5Ti-2.5Mo(at%)とZr-20Ti-30Mo(at%)をアーク溶解で作製し,溶融合金の炭素との反応性や濡れ性を評価するために,黒鉛板上で合金を溶解させるモデル実験を行った。Ar雰囲気において1750℃-15minで上記の2つの合金を溶解させたところ,どちらの合金も溶融して炭素と反応し,反応中にMoの濃度上昇に伴い融点が上昇している様子が見られた。しかし,Zr-20Ti-30Moは完全には溶融していなかったことから反応中に合金の融点が1750℃以上に上昇したと考えられる。そこで,Zr-37.5Ti-2.5Moをピッチ系炭素繊維と炭素,TiC,ZrC,HfC,TaC及びNbC粒子からなる前駆体に含浸させ,C/RHECsを作製した。作製後のマトリックスはハイエントロピー化しており,情報科学と熱力学を組み合わせたプロセスにより合金設計と材料設計を本年度内に完了することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナウィルス感染症の蔓延に伴う緊急事態宣言の影響で実験に費やす時間が大幅に減少した。しかし,熱力学計算ソフトによる材料設計はPCを用いて問題なく行うことができたため,材料の試作数が減少しても合金設計とその溶融によるC/RHECsの作製を予定通り行うことができた。このことから図らずも,社会的に実験室での実験が制限される環境が作り出されたことによって,情報科学と熱力学を組み合わせた材料プロセスの有効性が示される結果となった。得られたC/RHECsはアーク風洞試験を実施することで約2000℃程度での酸化雰囲気における酸化挙動を評価する予定である。 溶融含浸に用いた合金はMoの濃度が2.5at%程度と非常に少ないものを選択した。これは予想以上に,Ti及びZrと炭素の反応により合金中のMo濃度が上昇し,融点が上昇することで30at%Moを含むZr-TiーMo合金は完全に溶融しなかったためである。これは反応後の合金の融点を増加させるという革新的なコンセプトを達成しているものの,制御可能な反応プロセスを実現するためには,融点と合金濃度の関係を定量的に評価・解析する必要があると分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
音速の7~10倍で飛行する極超音速機の部材が加熱される温度である約2000℃程度での酸化挙動を評価するために,本年度で作製した材料は,上記の環境を模擬できるアーク風洞試験を行う予定である。酸化により生成すると予想される酸化物をあらかじめ熱力学計算ソフトで解析することで,プロセスだけに留まらず,材料の反応を伴う変化に対して情報科学を取り入れることを目指す。材料のアーク風洞試験後は組織観察及び組成分析により組織とエントロピーの増加の関係を明らかにすることを目指す。また,昨年度終了した研究活動スタート支援で作製したZr-Ti合金の含浸により作製したC/RHECsのアーク風洞試験結果と比較することで,構成材料に起因する酸化挙動とエントロピー増大に起因する酸化挙動を分離することを目指す。最終的に,反応速度とエントロピーと材料の種類の関係をまとめて2000℃以上の酸化雰囲気で用いる材料の設計を行う際に有用なデータベースの一部となる情報とする。
|