2020 Fiscal Year Research-status Report
接着接合継手における超音波共振現象の解明と健全性評価原理の確立
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20K14614
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 直樹 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00802092)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 接着接合 / 非破壊評価 / 超音波 / 共振 / スペクトル解析 / ガイド波 / 機械材料・材料力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
接着接合部の健全性評価の高度化に向けて,2種類の超音波モード入射に対する接着部の挙動について初年度は検討を行った. 第1に,水中に配置した接着部への縦波垂直入射時の挙動について,理論的・実験的検討を実施した.アルミ合金接着部を模擬した理論解析の結果,多重反射波の干渉により超音波の透過係数に複数のピークが現れることがわかったが,これらのピーク周波数では接着部が異なる振動分布を示した.特に,接着層が局所共振するモードが存在し,このピーク周波数は接着剤特性および接着界面特性に敏感に依存した.これらの結果に基づき,超音波入射時の透過波または反射波のスペクトル解析による接着部の特性評価法を提案し,被着体がアルミ合金または炭素繊維強化樹脂(CFRP)の接着継手に対して提案手法を適用し,界面特性を評価した. 第2に,ガイド波による効率的な特性評価の実現に向けて,金属薄板のシングルラップ継手に対する理論解析と実験的検討を行った.空中超音波探触子により板中に特定のラム波モード(0次反対称モード)を発生させ,接着部の透過波を圧電探触子で受信する測定系を構築した.測定の結果,透過波のスペクトル分布は極値(ピーク/ノッチ)を有することがわかった.理論解析の結果より,この現象は接着部におけるガイド波の多重反射成分が干渉することに起因すると考えられる.これらの結果に基づき,透過ラム波スペクトルのピーク/ノッチ周波数に着目した接着部の剛性評価法を提案した.異なる接着条件の下で作製した試験片に対して提案手法を適用し,接着部の剛性評価について予備的検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,超音波モードの干渉により生じる種々の共振挙動に着目した接着部の特性評価の実現を目指しており,初年度は現象の理論的・実験的解明による基礎的な知見の取得を目的としていた.縦波入射に対する接着部の挙動については,測定される共振周波数を理論解析で良好に再現できたことに加え,接着層の局所共振に対応するモードのピーク高さが他のピークに比べ相対的に低くなることを実験により確認できた.この結果は,接着部の板厚共振を良好に再現する理論モデルを構築できたことを示すと考えている.また,ラム波入射に対するシングルラップ継手の挙動に関しては,実験的検討で波形処理の方法に考慮すべき点が残っているものの,評価に適した測定系の構築や理論的に示された現象の再現など,一定の進展が見られたと考えている.縦波入射とラム波入射の双方で,状態の異なる接着継手の判別・評価を提案手法により実現する上で,来年度の研究で必要となる知見が得られたものと考えている.以上の理由から,本研究課題はおおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度に得られた知見に基づいて,2021年度は超音波共振を利用した提案手法による特性評価結果と接着状態の関係について検討・考察を行う. 縦波入射時の板厚共振に関しては,2020年度に行った理論的検討の結果,CFRP接着継手のように被着体の粘弾性が無視できない場合には劣化界面層の位置が超音波スペクトル分布に影響を及ぼすことが示唆された.この結果に着目することで,界面の結合状態と劣化界面の位置を同時に評価できる可能性がある.今後の研究では,(1)接着不良部の検出,(2)接着部の結合状態に関する定量的評価,(3)接着不良部の板厚方向位置の評価の3点が提案手法で可能であるかどうか被着体の種類や接着条件を変化させて検討を行う.ラム波入射時の共振に着目した重ね接着継手の評価に関しても,提案手法による特性評価結果と接着状態,接着形態の関係について明らかにする.接着長さや接着層厚,さらには継手に対する負荷状態が剛性の評価結果に与える影響について検討を行う.
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Causes of Carryover |
2020年度当初に申請した予算使用計画に比べ,初年度の使用額はかなり抑制された結果となった.これは,(1)新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防措置により学会・会議等がオンライン開催となり,出張件数がゼロとなったこと,および(2)研究代表者の所属機関が変更となったことが影響している.特に(2)に関しては,初年度に調達する必要があると考えていた実験装置を新しい所属先が保有しており,本研究で使用する許可をいただけため,該当の装置の購入が不要となった.一方で,2021年度に使用を予定していた装置を前所属先では使用可能であったが,現所属先では保有していないため,2020年度の未使用金額をその装置の購入に充てる予定である.2020年度の未使用分をその装置の購入に充てたいと考えている
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