2020 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research of wet mass finishing focused on abrasive media behavior
Project/Area Number |
20K14623
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 洋平 金沢大学, 機械工学系, 助教 (30456686)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | バレル研磨 / ジャイロバレル研磨 / 仕上げ加工 / 複雑形状 / 研磨加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
多数の遊離砥粒による材料除去により表面粗さを向上する研磨加工は,優れた摩擦摩耗特性や美しい外観などを創成できるため,ものづくりにおいて重要な加工技術である.しかし,金型や装飾品などといった複雑形状に対する研磨加工では,多軸加工機やロボットが用いられることもあるものの,未だ職人の手作業に頼るケースが多い.このため,複雑形状に対する優れた研磨技術の確立は生産工学において重要な課題といえ,本研究ではその有力な解のひとつとして期待されるバレル研磨に関する理論構築に取組む.なお,バレル研磨に関する理論構築はこれまでにほとんど行われておらず,加工条件の最適化や新技術の開発,バレル研磨の活用範囲拡大を妨げる要因となっている.このため,本研究は取り組むべき重要な課題であるといえる. バレル研磨では,砥粒と水を充填したバレル内に加工物を入れ,バレルに運動を与えることで,多数の砥粒と加工物の間に相対運動を生じさせる.そして,この相対運動による微量の材料除去の繰返しにより加工物の表面粗さが向上される.このため,バレル研磨の理論構築を行う上で,加工物表面での砥粒の動きの理解は不可欠であるといえる.当該年度では,小型無線カメラを加工物内に設置することで,加工物表面での砥粒運動の観察を実現した.また,圧力計測シートを用いることで,加工物と砥粒間の局所的な接触圧分布の計測も実現した.さらに,雪だるま状の非単純形状加工物に対する研磨実験も実施し,加工物面内の表面粗さ向上スピードの違いについても検討を行った. 上記のように,本研究の核となる加工面での砥粒挙動の評価は実現できており,今後砥粒挙動に関する評価結果に基づく表面粗さ向上スピードなどの研磨結果の推定に取組むことで,バレル研磨の理論構築を進めていく.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において,バレル研磨の理論構築を行う上で核となる加工物表面での砥粒挙動の評価を実現した.このため,「おおむね順調に進展している」と評価している. 最初に,加工表面での砥粒挙動を観察する装置の開発に取組んだ.開発装置は,アクリル円筒の内側をシールし,小型無線カメラを設置することで,湿式環境下でも砥粒挙動の観察を可能にした.そして,本装置を用いた観察を行い,加工物と接触した砥粒は主に上方に移動することや,バレル内側と外側で砥粒速度に大きな違いがあるなど,理論構築につながる結果を多く得ている.また,三角柱状の砥粒を用いた際に,加工物表面上での砥粒の回転現象も確認しており,砥粒形状による加工特性の違いといった新たな研究課題の顕在化にも貢献している. 次に,圧力計測シートを用いた加工物と砥粒の局所的な接触応力分布の評価に取組んだ.本評価により,加工物の下側やバレル外側で高い接触応力が生じることを明らかにした.これらは,加工物の各位置による加工特性の違いを生み出す要因であり,理論構築において有力な検討指標を開発できたといえる. また,金属AM(Additive Manufacturing)により雪だるま状の2つの球からなる加工物を造形し,研磨試験を実施した.本試験により,加工物下側およびバレル外側で表面粗さ向上が早く進展することを確認している.これは上記の砥粒挙動観察と接触力分布評価で得られた結果により説明できる結果であり,2年目に実施予定の「砥粒挙動に基づく研磨結果の推定」の実現可能性が高いことを確認した. 最後に,当初計画と比べ「加工物表面の評価」を十分に行うことができずに,「材料除去モデルの検討」などで遅れが生じているが,「非単純形状に対する研磨実験」の実施など,計画を前倒しで実施した項目もあり,現在までは概ね順調に進展しているといえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに研究は概ね順調に進展しているとともに,2年目に実施予定の検討も実現可能性が高いことを確認している.このため今後は,1年目の未完事項とともに,当初計画の2年目実施項目を行っていく.なお,今後の各実施項目における概要及び研究推進方策は下記の通りである. 最初に,これまでに開発した加工物表面の砥粒挙動の評価方法を活用し,材料除去モデルの検討を実施する.この検討では,砥粒流動方向に対する加工物の向きや砥粒サイズなどを変化させた各条件で,砥粒挙動と加工物表面推移を評価し,材料除去モデルを確立していく.なお,当該年度に本検討を計画通り進めることができなかった原因である「加工物表面の評価」については,石川県工業試験場の開放装置で実施できることを既に確認しており,本装置を活用することで実現していく. 次に,DEM(Discrete Element Method, 個別要素法)を用いた複雑形状に対する加工面での砥粒挙動を推定できる解析手法の開発にも取組む.既存の乾式条件における砥粒挙動の解析から,産業界で広く活用される湿式条件に展開するために,湿潤砥粒の摩擦特性の同定と水による砥粒凝集を再現できるモデルの検討が必要となる.本検討を,当初計画していた加工物表面の砥粒挙動の観察結果だけでなく,加工物と砥粒の局所的な接触応力分布も活用することで,多方面からの整合確認を行い推進していく. 最終的に,砥粒挙動に基づく材料除去モデルと砥粒挙動の解析に基づき,複雑形状加工物における目標表面粗さに到達するまでの加工時間などの推定に取組む.本検討を実施する上で,検証実験に用いる複雑形状かつ研磨対象に適した適度な表面性状をもつ加工物の準備が懸念であった.本懸念に対し,当該年度に検討を行った金属AMで造形した加工物は最適であることを確認しており,本検討も金属AM造形物を対象とすることで推進していく.
|
Research Products
(7 results)