2021 Fiscal Year Research-status Report
フォトニックナノジェットの強度分布・位置・姿勢制御によるナノ3次元レーザ加工
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20K14627
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上野原 努 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10868920)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザ微細加工 / 強度分布制御 / フォトニックナノジェット / 空間光変調器 / 電磁場シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究課題の遂行において大きく分けて次の3つの研究課題を設定し,並行して推進した.それぞれについて得られた成果を具体的に述べる. (1) 水中で発生したフォトニックナノジェットによるレーザーアブレーション加工.昨年度に引き続き,水中におけるフォトニックナノジェット加工において重要なパラメータを実験的に調べた.空気中における加工との大きな違いとして,キャビテーションバブルの発生によるレーザーパワーの損失が発生することを明らかにした.水中では試料に照射するパワー密度が大きいほど,発生するキャビテーションバブルが大きくなり,次に照射されるレーザーを妨げることがわかり,空気中とはことなる加工現象であることを考慮した加工制御が必要であることを明らかにした. (2) 空間光変調器を用いたフォトニックナノジェットの強度分布制御.フォトニックナノジェットの強度分布をフレキシブルに制御するために空間光変調器を用いた光学系を設計した.空間光変調器の変調面を1/250に縮小投影する光学系を実装し,直径8μmの球に対して入射する光の強度分布を高分解能に制御可能となった.ドーナツ状の強度分布を作り,その円環の大きさを変化させることでフォトニックナノジェットのビーム径が変化している様子を拡大観察系によって直接観察することで,フォトニックナノジェットの強度分布制御が可能であることを明らかにした. (3) マイクロ球の振動検出によるインプロセス計測.レーザー照射時には加工された試料を起源として衝撃波が発生する.この衝撃波がマイクロ球に及ぼす影響を,マイクロ球の位置を共焦点光学系によって測定することで調査した.加工痕の深さと加工後の球の位置には相関が見られた.これにより球のモニタリングによって加工痕のその場計測の可能性を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず,空気中と水中の加工現象の違いについて検討した.空気中では入射するパワーが大きいほど加工痕の穴径と穴深さは大きくなるが,水中では必ずしもそうでない結果が得られた.これは水中加工特有のキャビテーションバブルの発生に起因するものであり,パワーが大きいほどキャビテーションバブルが大きく成長することで,次のレーザー照射を妨げるためであることが考察された.このように水中では,空気中とは異なる制御方針を立てなければならないことが明らかとなった. また,フォトニックナノジェットの強度分布のフレキシブルな制御に向けて空間光変調器をこれまでの構築していたレーザー加工装置に導入した.まず,空間光変調器を用いてマイクロ球に入射する光の強度分布を制御する光学系を設計した.直径8μm程度のマイクロ球に変調した強度分布の光を照射するため,空間光変調器の変調面を1/250に縮小してマイクロ球に照射するシステムを構築した.マイクロ球に照射する強度分布を制御することで発生するフォトニックナノジェットの強度分布が変化することを,簡易的な観察系で確認した.この点に関してはより詳細な定量評価が必要である. さらに,レーザー照射時の加工メカニズムの解明に向けてマイクロ球の位置を検出する実験も行った.当初の予定では,マイクロ球の振動を検出する予定であったが,その前段階として,加工前後での球の変位を調査した.加工時に発生する衝撃波によって球に力がかかり,球が変位していることを明らかにした.この変位量と加工痕の深さの間には相関があることが明らかになった. 強度分布制御に関しては定量評価がまだできていない点など不十分な点はあるが,加工メカニズムの解明の部分に関しては当初の予定より推進することができたため,研究全体としてはおおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,空間光変調器を用いた入射光の強度分布制御によるフォトニックナノジェットの強度分布制御に関して,制御パラメータとフォトニックナノジェットパラメータの関係について定量的な評価を行う.まず電磁場シミュレーションによって,理論的な関係を明らかにする.ここでは,強度分布の制御だけでなく,位相分布制御による姿勢の制御方法についてもシミュレーションによって検討する.実験では,発生したフォトニックナノジェットの強度分布の計測方法について検討する.フォトニックナノジェットの姿勢を評価するためにも3次元で強度分布を計測しなければならない.そこで現段階では,共焦点光学系を基にした強度分布計測と加工実験による推定の2つの方法を検討するつもりである.この2つのアプローチによって,実際の強度分布の定量評価だけでなく,強度分布制御と加工制御の関係についても定量的に評価することが可能となる. また,加工痕のインプロセス計測に向けて加工現象の詳細な観察とその場のデータ取得方法について検討する.レーザー照射時の衝撃波によってマイクロ球が3次元的な振動をしている様子が見られたため,マイクロ球の3次元の位置計測システムを構築する.具体的には,共焦点光学系を拡張することで,1次元の振動検出から3次元の振動検出に拡張する.加工実験を通して,加工痕のパラメータ(径,深さなど)と振動のパラメータ(振幅,振動数,方向など)を関連させて分析することで,インプロセス計測の実現に向けた基礎的なメカニズムの解明を目指す.
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