2020 Fiscal Year Research-status Report
Room temperature bonding of metal oxide films by surface activated bonding method
Project/Area Number |
20K14629
|
Research Institution | Kanagawa University of Human Services |
Principal Investigator |
内海 淳 神奈川県立保健福祉大学, その他部局等, 研究員 (70768390)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 常温接合 / 表面活性化 / サファイア / X線光電子分光法(XPS) / 透過電子顕微鏡(TEM) / エネルギー損失分光法(EELS) |
Outline of Annual Research Achievements |
熱処理不要な優位性を持つ表面活性化法による常温接合技術は、多くの材料に適用可能だが酸化物系材料は難しい。しかしながら、サファイア同士では強固な接合が確認できており、その接合機構を解明することでさらなる適用材料の拡大が期待でき、今後ニーズ増大が予想される異種材料間接合への展開に向けた基盤技術整備につながる。そこで、本年度は、X線光電子分光法(XPS)による深さ分析を活用し、まずサファイアウェハ表面における活性化処理後の化学結合状態及び組成分析を行った。表面スパッタ用イオンビームのエネルギー及び照射時間をパラメータとして、照射前後の表面におけるAl元素のXPSスペクトルを測定した結果、照射後のスペクトル幅が広がり、ビームエネルギーの増加と共にその広がり量が大きくなることが分かった。スペクトル幅の増加は、ビーム照射による結晶性ダメージが原因と考えられる。一方、照射時間によるスペクトル幅の変化は確認できなかった。また、定量分析からビームエネルギーが高い程酸素元素のスパッタ量が多く、Al-richな表面が形成されていることが分かり、シミュレーション結果と定性的に一致していることが確認できた。 次に、常温接合によるサファイア間接合界面におけるAlの電子構造を電子エネルギー損失分光法(EELS)により分析した。透過電子顕微鏡(TEM)による観察結果から、その接合界面には厚さ1nm程度の中間層の存在が確認できている。中間層内のAlのEELSスペクトルはサファイア内のそれとほぼ同様であり、中間層における結晶性は維持されていると考えられる。しかしながら、XPSによる分析結果と同様に中間層におけるAlのEELSスペクトルにおいてもブロード化が確認され、結晶性へのダメージも同時に発生していることを明らかにした。 これらの結果は、今後酸化物系材料の接合技術を確立する上で有用な知見となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常温接合技術では難接合材である酸化物系材料への適用拡大を狙って、サファイア間接合における接合メカニズム解明に向けた基礎データ整備を行った。本年度は、XPSによる深さ分析を活用し、サファイアウェハ表面におけるイオンビームスパッタの影響を検討した。その結果、ビームエネルギーの増加と共にAlのXPSスペクトル幅の広がりが増大することが分かり、ビーム照射による表面ダメージの発生が確認できた。またAl-richな表面が形成され、定性的にシミュレーションとの一致もみた。さらに、サファイア間接合界面においてEELS分析を行い、中間層におけるAlのEELSスペクトルはサファイア内のAlのそれと同等であり、中間層において結晶性が維持されていることを示した。これらの結果よりメカニズム解明に向けた有用な基礎データを把握でき、今後のデータ整備につながると考えられるため、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、酸化物材料の接合特性を評価するため、表面活性化法による酸化アルミ薄膜間の常温接合を検討する。酸化アルミ薄膜を形成したSiウェハを用いて接合試験を実施し、接合強度を評価すると共に、TEMによる接合界面の微細構造解析、またエネルギー分散型X線分析(EDX)及びEELSにより接合界面における元素分析及び電子構造を分析する。昨年度得られた知見に加えて、これら接合特性に関わる新たな知見をあわせることにより、酸化物系材料における接合機構解明に向けたデータを整備し、その接合技術の確立を目指す。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により参加予定の学会が中止となり参加費用発生がなかったため、次年度使用額が生じた。今後、接合特性を評価するための酸化膜の成膜費用及びその接合界面を分析評価するための費用として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)