2021 Fiscal Year Research-status Report
マイクロスケールにおける凝着力の引き離し速度依存性と粘弾性を考慮した理論の構築
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20K14641
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
石川 功 鳥取大学, 工学研究科, 助教 (70845164)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 表面力 / 凝着力 / 引き離し速度 / 粘弾性 / 時間依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度では,実験と実験装置のシミュレーションを行った。実験装置は表面力測定装置(エリオニクス社製ESF-5000)を用いた。2020年度に装置の改良を行い(従来は荷重制御で引き離し実験を行っていたため、引き離し速度一定の元実験が行えなかった)、速度制御で引き離し実験を行うことができるようになり、より精密な実験が可能となった。引き離し速度は1~1000nm/sと大きく変化させて球と平面の引き離し実験を行った。球の材料としては粘弾性を持つPDMS(ポリジメチルシロキサン)、平面の材料としてはSiを用いた。 実験成果は、従来と同じように表面力・凝着力の引き離し速度依存性が見られた。しかし、その引き離し速度依存性は引き離し速度によって変化することが新たに分かった。従来の実験では引き離し速度が増加するほど、凝着力が増加する結果が得られていた。今年度もこの傾向は引き離し速度が大きい場合に見られたが(10nm/s以上)、引き離し速度が小さい場合(1~10nm/s)では逆の傾向を示し、引き離し速度が大きいほど凝着力が小さい傾向が見られた。私が知る限りこの結果は過去の先行研究の報告にはなく、新しい結果である。 また、実験と並行して、実験装置のシミュレーションをしており、実験では直接得られない接触状態(接触半径、弾性変形量、押し込み深さなど)の予測を可能とした。今回実験に用いているPDMSは粘弾性を持つが、粘性の効果をいかにシミュレーションに組み込むか現在検討中である。 表面力はNEMS/MEMSなどの微小機械要素の性能を決定する重要な力であり,微小機械要素の接触や摺動の際に発生する表面力を定量的に精密に把握することは今後期待されるミクロな世界での加工において大変重要であると考える。特に、本研究で得られた凝着力の引き離し速度依存性はスティッキングなどをはじめとした種々の問題に役立てられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験については順調に進んでいる。実験結果の報告については学会発表で成果を報告してはいるが、学術論文として発表できていない。2022年度では論文化を積極的に進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き離し速度が小さい場合(10nm/s以下)の表面力測定をより詳細に行うことで、2021年度に得られた結果を確認するとともに、論文化を進める。 また、装置のシミュレーションについて粘弾性モデルを取り入れた数値解析を継続して行うことで、凝着力の引き離し速度依存性を粘弾性より理論的に解明していきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度では実験装置の精密測定ユニットに不具合を生じたため、メンテナンスで大きな支出が生じた。今後もこのようなことが起こることを危惧した。また、2022年度には2つの国際学会発表を予定しており、その旅費予算を考慮したため。
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Research Products
(5 results)