2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on friction reduction mechanism of solvation layers on molecular adsorption films
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20K14642
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡部 誠也 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (20850035)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 表面分析 / 分子吸着膜 / 溶媒和構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、「研究実施計画」の①分子吸着膜上の溶媒和構造の解明と②メゾスコピック領域における摩擦試験の内、①を中心に取り組んだ。2020年度に実施した研究では、鉄鋼材を基板として使用し、周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM:Frequency Modulation AFM)によりステアリン酸添加油中における鉄鋼材表面上に形成される界面構造観察を行った。また、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)により摩擦特性調査を行い、界面構造と摩擦特性の関連について調査した。その結果から、(1)ステアリン酸添加油中において、鉄鋼表面にステアリン酸吸着膜が形成され、その吸着膜上に潤滑油分子が基板に対して平行に配列した層構造を形成すること、ならびに、(2)ステアリン酸吸着膜上に形成される潤滑油分子の層構造は、数十pNオーダーの微小荷重領域において摩擦低減効果を担うことを明らかとした。 先行研究から、油性剤分子吸着膜上に基油分子が形成する溶媒和構造が、混合~流体潤滑領域における摩擦低減に寄与することが示されている。しかしながら、その詳細なメカニズムや摩擦低減効果の定量性については不明な点が多く、その解明が望まれている。2020年度における研究成果は、油性剤分子吸着膜上に基油分子が形成する溶媒和構造の空間分布情報を明らかにし、さらに、摩擦低減効果を及ぼす荷重域を定量的に評価したものである。本研究成果による知見は、不明瞭な点の多い混合潤滑領域における現象の理解に大きな進展をもたらすものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、溶媒和構造に関する構造解明は、その空間情報を取得することを目標としていた。2020年度の研究成果では、目標としていた計測に加えて、AFMを用いた極微小荷重領域における摩擦力の測定という挑戦的な計測にも成功した。その結果から、溶媒和構造の空間情報の理解に加え、それが摩擦低減効果を及ぼす荷重域の定量的までを達成した。これは、当初の目標を大幅に上回る成果であると考えている。なお、成果発表として、複数の学術会議での発表を予定していたが、世情による理由でいずれも中止となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では、メゾスコピック領域における摩擦試験に向け、メゾスケール摩擦試験機と顕微ラマン分光分析装置を組み合わせたその場観察試験機の製作に着手する。なお、摩擦試験機構については、当初の計画より修正を加えたものとする。具体的には、3軸ピエゾステージ上に設置した平板試験片を半球プリズムに対して摺動させる機構とする。2021年度では、装置部品の設計・製作と装置の組立を行い、3軸ピエゾステージによる摺動動作ならびに、荷重制御のためのフィードバック制御を目標とする。
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Causes of Carryover |
世情による理由から、開発予定であった装置部品の調達に支障が生じたため。2021年度では、2020年度の助成金と合わせ、メゾスケール摩擦試験機の開発に使用する。
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