2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular insight into gas separation processes in polymeric membranes
Project/Area Number |
20K14644
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉本 勇太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90772137)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高分子気体分離膜 / 有機・無機ハイブリッド膜 / 固有微細孔性高分子 / シリカ / 溶解・拡散モデル / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,固有微細孔性高分子(polymer of intrinsic microporosity, PIM)の一つであるPIM-1を対象とし,分子シミュレーションを用いて,二酸化炭素,窒素,メタンの溶解性・拡散性を解析した. まず,分子動力学(molecular dynamics, MD)シミュレーションを用いて,バルクPIM-1系を作成し,PIM-1の構造特性が実験とよい一致を示すことを確認した.次に,種々の気体分子の平均二乗変位を計算することで,自己拡散係数を算出した.その結果,気体分子が正常拡散に至るためには,数百ns以上の拡散時間を要することが分かった.これは,PIM-1の分子構造が屈曲したラダー型構造を有しており,内部の空隙分布が不均一であることに起因する.また,気体の吸着挙動がdual mode sorptionモデルに従うものとして,MDから求まった自己拡散係数を補正し,実験(time-lag法)で求まった拡散係数と比較した.その結果,拡散係数の補正値は実験値とよい一致を示しており,計算手法が妥当なものであることが分かった. 次に,種々の気体のPIM-1に対する溶解性を評価するために,グランドカノニカルモンテカルロシミュレーションを用いて,気体の吸着過程を解析した.得られた溶解度係数は実験値とよい一致を示しており,計算モデルが妥当なものであることが分かった.また,二酸化炭素の溶解性は,窒素やメタンに比べて非常に大きく,溶解選択性が透過選択性に大きく寄与することが分かった. 加えて,PIM-1とアモルファスシリカから成る有機・無機ハイブリッド膜の計算系の構築にも着手した.構造特性の観点から,実験に対応する妥当なハイブリッド膜が作成できていることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画の通り,バルクPIM-1系における二酸化炭素,窒素,メタンの溶解・拡散挙動を解析することができた.その際,分子シミュレーションから膜の微視的構造特性を抽出し,種々の気体の溶解・拡散挙動に対する影響因子を明らかにすることができた. また,PIM-1とアモルファスシリカから成る有機・無機ハイブリッド膜の計算系の構築にも既に着手している.構造特性の観点から,実験に対応する妥当な膜構造を作成できており,次年度の実施項目に円滑に取り組める状況となっている. 以上より,全体的な進捗状況としては,おおむね順調に進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
PIM-1とアモルファスシリカから成る有機・無機ハイブリッド膜を対象とし,分子シミュレーションを用いて,二酸化炭素,窒素,メタンの溶解・拡散挙動を解析する.その際,PIM-1領域のサイズを変化させることで,PIM-1/シリカ界面の影響範囲を検証する.界面の存在により分子鎖のパッキングが阻害されて生じる空隙や,アモルファスシリカ表面のヒドロキシル基に対する親和性の影響によって,種々の気体の溶解・拡散挙動がどのように変化するかを明らかにする.今年度実施したバルクPIM-1に対する計算結果と比較することで,有機・無機ハイブリッド膜の界面特性が気体の溶解・拡散挙動に与える影響を明らかにし,透過性と選択性を両立するための膜設計指針を提示する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により,学会がオンライン開催となり,当初計画していた旅費の使用がなくなったため.次年度も同様の状況が続くことを想定し,当初旅費として計上していた経費の一部をスーパーコンピュータの使用料やストレージシステムの増補に充当する予定である.
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