2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a numerical model to clarify the rupture/damage mechanics of the red blood cell
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20K14651
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
ニックス ステファニー 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (00756637)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 赤血球膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内では赤血球が損傷を受けることが少ないが,血液が補助人工心臓や透析装置を通過する際に,高い流体せん断応力や乱流により溶血(赤血球の内容物であるヘモグロビンが流出すること)が発生することが知られている.その他に,赤血球の破壊により赤血球数が減少し,貧血や腎不全になることもある.また,赤血球が破壊まで至らなくても補助人工心臓などの医療機器から血液への損傷を引き起こすことが明らかになってきた.これらの結果の中で,赤血球への損傷を軽減するための工夫がいくつか報告されているが,赤血球の破壊・損傷の根本的なメカニズムが未解明なままであるため,赤血球に損傷を起こさない医療機器のデザインがまだ大きな課題として残されている.本研究の目的は,赤血球膜の実構造を基づいた数値モデルを開発し,赤血球の破壊・損傷のメカニズムの新規候補を提案することである. 本年度の研究成果は下記の通りである.まず,赤血球膜骨格の実構造を反映したメッシュ生成を行った.赤血球の数値計算では均一な三角形メッシュを用いることが多いが,骨格の主成分のスペクトリンは接続性の違う2種類の頂点を持っている.そのため,スペクトリンの濃度と各頂点による赤血球の力学特性の依存性を調査している.また,赤血球膜に応用したバーテックスモデルの開発を行った.本来のバーテックスモデルでは,組織内のそれぞれの細胞を2次元の多角形と仮定し,細胞が交差する頂点を移動させるが,トポロジーが赤血球骨格に類似するためこの手法を採用した.動作確認をしながら既存のコードに導入する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本では一年以上新型コロナウイルス感染症が蔓延しており,未だに反動的な感染拡大防止対策が続いている.そのため,感染拡大防止対策に対しては柔軟で迅速な対応が必要であるため,通常通りの研究時間と環境の確保が困難であった.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度では,下記の方針で研究を遂行する予定である.まず,スペクトリンの結合解離の実装を予定している.赤血球の引張試験を再現した計算では,メッシュの三角要素の一部が非常に長細く変形することを観察している.赤血球が長時間大変形を受ける場合,スペクトリンと膜貫通タンパク質と結合・解離し,膜骨格のトポロジーが変化するように考えられるが,スペクトリンの結合・解離速度と赤血球の変形の関係がよく知られていない.バーテックスモデルでは細胞分裂等のトポロジー変化がすでに実装されているため,同じようなプロセスでスペクトリンの化学的な動態も導入する. また,バーテックスモデルを実装したプログラムと既存の境界要素法を用いたプログラムの連結を予定している.主に三角形メッシュに対応した既存のプログラムに様々な多角形に対して積分し,メッシュの頂点を移動させることが一つの課題となっている.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症が年度中蔓延しており,学会への出張や研究補助の獲得が困難であったため,次年度使用額が発生した.次年度では,日本国内のワクチン接種速度が加速することを期待し,今年度後半に学会参加の実現を目指す.ワクチン接種が広がらない場合,シミュレーションの規模を拡大し,より精度の良い結果の実現を目指す.
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