2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K14659
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 熱輸送特性 / 分子動力学法 / 固液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
固体の熱の大部分は原子の振動によって伝わり,その振動を量子化したのはフォノン(音響量子)である.数値計算手法の一つである分子動力学法によってフォノン解析を行うことでその物質の熱輸送特性を明瞭に表すことができるが固体内に限定される.本研究では,分子動力学法に於いて主に固液界面に適用できる熱輸送特性の解析方法を確立させる.2つの方面から取り組む:①「熱流束スペクトル解析」はフォノン解析と同様に元来固体用の解析手法であるものの,その物理的な解釈と妥当性は未だに不明瞭であり,本研究ではそれらを明確化していく.②より物理的な意味を持った手法として熱流束の自己相関関数の周波数解析を行う.界面における熱流束相関はGreen-Kuboの関係により界面熱抵抗と関連付けられているため,固液界面の熱輸送特性には有効な方法だと思われる. ①と②の両方に関して,分子動力学ソフトではあるLAMMPSが主役的な役割を果たしながら,熱の流れを詳細に解析するに必要な機能は十分備わっていないため,本年度は水分子のような剛体でモデリングされるものでも熱の流れの観点から正しく扱えるようにLAMMPSの機能を拡張し,近い内に一般公開する予定である. ①に関しては,予定していた単原子分子から構成された簡易な系の解析を行ったものの,相関時間の長さからLAMMPSのみでの実装は困難であるため,別の後処理プログラムを作成し,詳細な解析を行った. ②に関して,必要な理論枠組みの構築を始めた.協力関係にあるグループのせん断力自己相関関数と界面摩擦係数のGreen-Kubo関係に関する知見の元,界面熱抵抗の場合,より複雑関数系になることを確認した. また,別のアップローチとして,界面自由エネルギーと界面熱抵抗に関連があることから,大阪大学とダルムスタット工科大学のグループと協力し,付着仕事算出に関する研究を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた解析プログラムの修正・作成や解析系の構築が予定通りに進めることができた.ただ,世界的なPCパーツの不足のため,解析用のPCの納品が遅れている.
|
Strategy for Future Research Activity |
①より複雑な系への熱流束スペクトルの適用を行う.具体的に,より複雑な水,グラフェンやポリマーのような多原子分子や多体ポテンシャルから構成される系の固液界面に熱流束スペクトル解析を行い,妥当性,物理的な意味合いを検証し,必要に応じて再手法の構築を行う. ②2020年度では熱流束と界面熱抵抗の場合,せん断力自己相関関数と界面摩擦係数のGreen-Kubo関係の解析解よりも複雑な関数系になること分かったため,数値開放や解析解を必要としないラプラス空間でのスペクトル解析などのアップローチを行う.
|
Causes of Carryover |
世界的なPCパーツ不足のため,予定していた解析用の計算機の納品が大幅に遅れている.更にコロナ禍のため,オンライ学会が増加し,浪費が大幅減少した.同様にコロナ禍のため,人件費を当てる予定の留学生の日本入りが遅くなるなどの遅れが発生している.2021年度には人件費が発生し,パソコンの納品が完了し,学会や論文掲載などでより研究成果を発信する予定であるため,2020年度からの繰り越しも含めて使用することが必要になると考えられる.
|
Research Products
(4 results)