2021 Fiscal Year Research-status Report
減圧環境下における衝突液滴の局所除熱特性および液滴内部の沸騰気泡解析
Project/Area Number |
20K14676
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
畠中 龍太 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (80725333)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薄膜熱電対 / 液滴衝突 / 全反射法 / TIR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、減圧環境下において、雰囲気ガスの相対湿度の調整を行った上で加熱面に単一液滴を衝突させ、固体表面温度の高時間/空間分解能計測と全反射法(TIR)による固液接触部計測の2つを同時実施することで気泡成長と壁面熱流束を評価すること、およびそれを用いて液滴の加熱面衝突現象における減圧環境の影響を解明することである。 FY2021は同時計測システムにおける温度データ校正試験を進めた。アンプ増幅後の薄膜熱電対の出力(ゼーベック係数)が構成金属の物性値に基づく予測値よりも約1割低かった点(前年度結果)の原因究明を進めた。信号増幅回路の増幅率の妥当性は別試験で確認できたため、熱電対そのものに原因があると判断した。熱電対薄膜熱電対ではバルクよりもゼーベック係数が著しく低下するとの過去の研究例はあるが、FY2021に試作/評価した範囲では膜厚依存性が認められなかった。更に幅広く膜厚を変化させ、また他の条件(密着層の厚さ等)を変えつつ、追加評価中である。 また、単純な系(大気圧下、沸騰が生じない温度)で液滴衝突実験を行い、高速度TIR撮影(60kHz)と高速温度計測(200kHz)の同時計測データのデータ処理/分析を進めた。その結果、液滴が濡れ広がる際の3相界面の位置と急峻な温度変化が時間的/空間的に一致する点、三相界面が測温部上を通過する時間が壁面温度低下の時間幅とほぼ一致することから、測温部の面内サイズが計測分解能の制約となっていることがわかった。液滴が壁面に接触した直後の温度遷移を高時間/空間分解能で評価した例は無いため、貴重な実験データが得られている。 今後は、熱電対出力に関する原因究明を進め、温度データの精度/信頼性を担保できる方法で校正・実験を行った上で、査読論文1本としてまとめることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FY2021-2022に予定していた全反射法計測(TIR)の導入および高速温度計測との同時実施は既に可能な状況に到達しており、凹凸レベルや時間/空間分解能の目標値は達成している。熱電対の校正に当初想定より時間を要しているものの、概ね計画通りに進捗している。 一方、当初計画よりも遅れているのは、1)相対湿度の計測/制御技術、2)温度データを基にした熱流束分布評価アルゴリズム構築、の2点である。1)は熱電対アレイそのものとは切り離して実施可能であり、研究期間内には完了できる見込みである。2)は、逆問題法のアルゴリズム構築は遅れているものの、TIR画像と温度データを結び付けて議論できる段階に到達している点、別途進めている物理モデル検討の方でも局所熱流束分布を加味したモデル詳細化を進めている点で目標達成に近づいている。 以上より、全体として概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では非常に高度且つ新規性の高い実験技術に挑戦しており、また研究対象である液滴現象も極めて複雑であるため、各要素を切り出して段階的に成果発表を積み上げていきたい。 提案者が博士課程学生として在籍した東京農工大学(単位取得退学済/未修了)の田川教授、過去に1年間在籍したDarmstadt工科大学(ドイツ)のTropea教授・Roisman教授との連携を積極的に行って、液滴現象や伝熱モデル化に関して理論的な考察を進めていきたい。 FY2021は、熱電対試作のために利用している産総研ナノプロセシング施設(NPF)が、緊急事態宣言や設備更新工事のために長期間閉鎖状態にあり、その他の期間も利用者殺到のために設備予約がとれない状況が続いたため、試作/評価のサイクルを回すのに非常に長い時間を要した。FY2022は、年度当初から試作/評価スケジュールを立てる、1回に試作するパターン数を増やす等の方策により、着実に進められるように工夫していきたい。
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Causes of Carryover |
(理由)研究計画の見直しの結果、相対湿度計測/制御は次年度以降に回すことになったため。また、光学系部品(レンズ等)は選定に時間を要しており、 FY2021は購入に至らずに借用品で対応したため。また、産総研ナノプロセシング施設の工事等の理由により、熱電対アレイの試作評価を想定通り進められなかったため。 (使用計画)次年度に繰り越した予算はFY2022以降に使用予定である。
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Research Products
(2 results)