2020 Fiscal Year Research-status Report
分散制御型多点加振を用いた非線形波動変調に基づく大型構造物の接触型損傷検出
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20K14682
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
田中 昂 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (60759273)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超音波 / 非線形振動 / 損傷検出 / 自励駆動 / 固有振動 / 多点加振 / 分散制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大型構造物に発生する接触型損傷を精度よく検出する技術を開発することを目的としている.超音波振動を用いた検出法は微小損傷を精度よく評価できる一方で,大型構造物全体の超音波振動励起は困難であるため,局所的な損傷検出に限られていた.局所フィードバック制御を用いた分散制御による多点加振技術を用いれば,超音波帯域の固有振動をように励起でき,構造物全体を検査対象とすることができる. 本年度は,大型構造物の超音波帯域の固有振動を容易に励起する多点加振技術の開発を行った.粘性減衰を打ち消すような制御コントローラを用いることで,固有振動数で自励発振する局所フィードバック制御を多数の加振点で行うと,各加振点は自励振動子とみなせる.自励振動子が構造物を介して連結された状態になると,自励振動子群の同期現象が発生する.固有振動数で自励発振し,最も同期しやすい固有振動数に引き込まれることで,単一の固有振動を励起できる(相互同期による固有振動励起).これにより,加振点間の調整なしに自動で固有振動を励起できる.さらに,一点の加振点に強制指令を入力すると,強制指令の周波数付近で最も励起しやすい固有振動が励起する(強制同期による固有振動励起).これにより,固有振動を任意に切り替えることが可能である. まず,超音波帯域における局所フィードバック制御による自励加振を実現するために,制御回路をアナログ回路で作成した.作成した回路を用いて多点加振を行った結果,相互同期により超音波帯域の単一の固有振動が励起できた.さらに,強制同期による固有振動励起実験を行った結果,いくつかの固有振動が励起できることを確認した.一方で,任意の固有振動の励起には至らなかった.この点については,固有振動ごとの発振しやすさの差の解消や,加振点数の増加が有効であると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
制御回路の設計,多点加振実験により,超音波帯域単一の固有振動励起が実現できた.さらに,強制同期による固有振動励起も実現した.任意の固有振動励起には固有振動ごとの発振のしやすさの差の解消やアクチュエータ個数の増加が有効であると考えられるが,本研究課題において検討すべき事項は完了している.したがって,当初の計画を達成しており,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,局所フィードバック制御を用いた多点加振により励起した固有振動を用いた損傷検出実験を実施する.まず,固有振動数が低下する開口損傷を対象とした損傷検出実験を行い,固有振動数低下に伴う発振周波数の低下が起こることを確認する.次に,非線形波動変調に基づく接触型損傷を対象とした損傷検出実験を行い,非線形波動変調によってはっせいする固有振動数変動に追従して,発振周波数の変動が生じることを確認する. これらの発振周波数の低下および変動をモニタリングすることで,開口損傷と接触型損傷の同時評価が可能であるかを検証する.
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Causes of Carryover |
実験を進める中で,初期の計画より安価に回路設計,実験装置の作成が実現したため.
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Research Products
(1 results)