2021 Fiscal Year Research-status Report
空気圧浮上搬送装置に発生する自励振動の励振メカニズム解明と制振機構の開発
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20K14683
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 真和 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40845640)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 流体関連振動 / 空気圧浮上 / 励振メカニズム / 制振機構 / 個別要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
空気圧浮上搬送装置に関して,実機を対象とした流体構造系の厳密な解析モデルを構築するために,搬送物の運動と空気の流れに加えて,支持構造の弾性変形が連成した流体構造連成系の運動方程式を導出した.そして,搬送物の支持構造の質量比,供給する空気の体積流量,支持構造の減衰比などを変化させて自励振動の特性と発生条件を調べた.この結果,支持構造の減衰が大きい場合では搬送物と支持構造が同位相で振動するモードの臨界流量は上昇する一方,搬送物と支持構造が逆位相で振動するモードの臨界流量は変化が小さいことを明らかにした.さらに本研究では,支持構造の減衰要素が自励振動の発生条件を及ぼす影響をより詳細に調べるために,3Dプリンタを用いて空気圧浮上搬送装置に取り付ける摩擦ダンパを新たに製作し,検証実験を実施した.この実験により,解析モデルの妥当性を検証し,さらに自励振動を実際に制振可能であることを確認した.しかし,パラメータによってはその制振効果は十分ではなく,摩擦ダンパの耐久性にも課題があることから摩擦ダンパと併用する制振機構の開発が必要となる.制振機構の構築には,系の詳細な励振原因を明確化する必要がある.そこで,動的安定性解析において,自励振動の発生に重要な因子を示すことで励振メカニズムを考察し,自励振動の詳細な励振機構を明らかにした.具体的には,搬送物に作用する非定常流体力を圧縮性や粘性などの因子に関する成分に分けて,それらの因子に起因する流体力の仕事を計算し,その仕事が系の動的安定性に及ぼす影響を調べた.そして,チャンバ内の空気の圧縮性に起因する流体力の仕事が空気供給部直上およびその付近で正であり,この仕事が自励振動の発生原因であることを示した.このことから,チャンバ内および空気供給部にて振動エネルギを消散させることが制振機構を開発する上で重要となることを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究でこれまでに構築した解析手法およびモデルは,搬送物に作用する非定常流体力を空気の圧縮性,すき間内のスクイーズ効果,すき間入口と空気供給部の絞り,流体慣性に関する成分に分解することで,それらの因子に起因する流体力の仕事を計算することができる.このため,本解析手法およびモデルは,空気圧浮上搬送装置の励振機構を明示することが可能であり,制振機構を開発する上で有益となる.さらに本研究では,解析モデルの妥当性を検証するために,搬送物の振動変位と,搬送物表面およびチャンバ内の圧力変動を同時計測可能な実験装置を製作し,流体力による仕事分布を計測した.この結果,仕事分布について解析と実験で傾向が一致することを示し,さらにチャンバ内の空気の圧力変動が搬送物の振動変位に対して位相進みになることで自励振動が発生するという点も一致した.自励振動の励振機構を解析と実験の両面から明らかにした点は有益な成果である.特に,チャンバ内空気の圧縮性に起因する流体力の仕事が空気供給部直上およびその付近で正であり,この仕事が自励振動の発生原因であることを明らかにしたことは,制振機構の開発において重要な知見である.さらに本研究では,搬送物の振動について,上下方向の並進振動に加えて回転振動の特性と発生条件を解析的に明らかにし,実験によりその妥当性も検証している.加えて,搬送物の多点同時接触問題を考慮した解析モデルを構築するために,粒子群の衝突現象の効率的な解析手法として近年注目されている個別要素法Non-smooth DEMを導入する準備を進めている.現在,Non-smooth DEMで問題となっている計算コストの大きさを改善するためにモデルの修正を行っており,さらに空気圧浮上搬送装置の動的安定性解析に適用する準備を進めている.上記の進捗について総合的に判断した結果,おおむね順調に研究が進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,実機を対象とした流体構造連成系の厳密な解析手法を構築するため,解析モデルの拡張を行う.具体的には,個別要素法Non-smooth DEMを導入することで搬送物の多点同時接触問題を考慮したモデルを構築する.このモデルを用いることで,石炭などをベルトに積載し空気圧浮上搬送を行う空気浮上式ベルトコンベアの動的安定性解析が可能となる.実験においては空気浮上式ベルトコンベアを模擬した検証用装置を新たに製作し,搬送物と支持構造の振動特性と振動発生条件を調べる.具体的には,ベルト上に搬送物を模擬した粒子を積載し,実機と同様に自励振動発生時にベルトと支持構造(トラフ)および粒子間で多点同時接触が生じる状態を再現する.また,トラフ表面に複数の圧力測定孔を設けて,搬送物の振動変位と搬送物下部のすき間内の圧力変動を同時測定することで流体力による仕事の分布を調べる.上記の動的安定性解析と実験により,これまでの研究で明らかにした励振機構に加えて,多点同時接触を伴う自励振動の発生機構が明らかとなる.そして,得られた知見から新たな制振機構を開発する.制振機構については,支持構造に摩擦ダンパを設ける機構が有益であることが明らかとなっているが,パラメータによってはその制振効果は十分ではないため,摩擦ダンパと併用する制振機構を開発する必要がある.これまでに得られた知見により,チャンバ内の空気の圧縮性に起因する仕事が励振原因であることが明らかとなっているため,現時点では制振機構としてチャンバに振動エネルギを散逸するアキュムレータを接続する装置を検討している.ただし,多点同時接触を伴う振動発生時に制振効果が得られるかは不透明であるため,前述の通りNon-smooth DEMを導入した解析モデルを用いて詳細な励振機構を明らかにした後,制振機構の構成を決定する.
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Causes of Carryover |
実験装置の更新・改善に掛かる費用を計上していたが,実験の進捗状況を考慮して装置の更新を次年度に行うことにしたため,残額は次年度に回すこととした.
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Research Products
(2 results)