2020 Fiscal Year Research-status Report
静電摩擦刺激と電気刺激を併用した触覚ディスプレイによる立体形状の触感再現
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20K14694
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石塚 裕己 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40784418)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触覚ディスプレイ / ハプティクス / 電気刺激 / 静電刺激 / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は電気刺激と静電刺激を併用することで,どのような感覚を提示できるのかを調査した.まず,微細加工技術によって電気刺激と静電刺激の両方が提示可能な触覚ディスプレイを作製した.この触覚ディスプレイを用いて20 Hzから320 Hzの異なる周波数の電流と電圧を用いた電気刺激と静電刺激を被験者に提示して,その際の刺激を感じ始める閾値電流と閾値電圧を求めた.その後,それぞれの刺激の強さを変えて提示し,電気刺激を圧力に,静電刺激を摩擦に知覚する条件を回答してもらった.その結果,電気刺激と静電刺激はともに入力した電圧の周波数が高くなると,それぞれ圧力と摩擦として知覚できることが確認された.これは周波数が高い場合には刺激間の感覚を感じなくなり,連続的な刺激であると知覚したためである.この結果に基づいて電気刺激と静電刺激の周波数を320 Hzに固定した.その後,電気刺激と静電刺激を同時に提示し,提示される触覚刺激と触覚サンプルとを比較してどのような形状として知覚されているかを確認した.触覚サンプルは高さが0-0.1 mmの間の凸形状として,0.2 mm刻みで設計した.その情報に基づいて3Dプリンタにて触覚サンプルを造形した.触覚刺激とサンプルと比較したところ,電気刺激と静電刺激の強さが強くなればそれと対応する触覚サンプルの高さが増加していき,最大で0.6 mmの高さの凸形状に感じるということが確認された.また,特定の条件下において,触覚刺激と触覚サンプル間での類似度が高くなり,リアリティが向上するという回答も得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は設計した触覚ディスプレイを用いて,静電刺激と電気刺激によって形状を再現するために必要な条件を明らかにした後に,それらを組み合わせてどのような物体の形状を再現できているのかを明らかにできた.現在使用している静電刺激と電気刺激は,刺激のために高い電流や電圧を要するため,安全性に優れた現在の電源装置での提示可能な範囲を明らかにすることができた.これによって初年度に,おおよそどのような形状であれば,触覚刺激を最適化しなくても提示可能であるかを明らかにできている.また,次年度での課題として,現状では1 mm以下の形状しか再現できていないことから,どうすれば形状を大きくできるのかということや,どうすれば提示されている刺激のリアリティを向上できるのかということも明らかになった.今年度問題として挙げられたことは,触覚ディスプレイの実用化には不可欠な課題であることから,次年度はこの課題について取り組んでいく.また,計画には有限要素法解析の導入も検討しており,今年度には指のモデルの変形と実測値との比較によるモデルの妥当性の検討についても取り組んでいる.次年度に有限要素解析を用いた凸形状再現の信号生成支援が可能かについても検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては,提示される触覚刺激によるリアリティの向上が挙げられる.そのためには,触角ディスプレイに入力する,電気刺激と静電刺激の電流と電圧の波形の最適化が挙げられる.現在はこれらの刺激がそれぞれ圧力と振動に感じるような条件を,矩形波とパルス波の周波数を変えて選定している.これらの刺激のタイミングやその強さを検討することによって,提示する刺激のリアリティを向上できないかを検討する.また,電源装置の改良も検討している.現在使用している電源は電流値や電圧値が制限されているものであるが,人体への安全が担保される範囲でより高い電圧値や電流値を出力できるような電源装置を設計し,刺激を強くすることも検討する.また,2020年度に作成した有限要素解析のモデルを用いて触覚刺激によってどのような皮膚の変形が生じるのかを確認して,それによってどのような形状であれば再現できるのかも検討する.現在は指先への触覚提示を主に対象としているが,我々は普段指先以外の部位でも触感を知覚することが多々ある.そのため,指先以外の例えば手の甲や腕に対して提案する手法で触感を提示できるかについても検討する.
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Causes of Carryover |
旅費として計上を検討していた予算を別途消化する必要が出て,消化したものの余りが出たため.
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Research Products
(2 results)