2021 Fiscal Year Research-status Report
冗長マニピュレータ有する冗長性の動力学的利用のための動力学特性の解明
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20K14705
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
岡部 弘佑 和歌山工業高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (40758132)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 冗長マニピュレータ / 動力学特性 / 動的可操作性多面体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は「運動学的冗長マニピュレータの有する冗長性の動力学利用のための動力学特性の導出とその検証」である.研究課題初年度はマニピュレータの出力可能な手先加速度の制限を表す動的可操作性多面体が動力学特性により並進する現象について解析を行い実機実験を行ってきた. 研究課題2年目となる昨年度は,研究実施計画とは少し外れるが動的可操作性多面体の並進に関する解析結果を拡張し,マニピュレータの出力可能な操作力の制限を表す操作力多面体についても動作加速度や動作速度に応じて並進する現象について明らかにした.この成果により接触ともなう研磨作業や組み立て作業においてより効率的な動作計画が可能となる. また,動力学特性に関する特性解析で使用した知見を応用し,冗長マニピュレータの運動学的冗長性を利用したセンサレスの衝突検出手法を提案した.この衝突検出手法は作業空間の直交補空間の基底ベクトルを利用して駆動トルクから直交補空間の成分を抽出することで,手先以外に加わった力の有無を判定する手法である.この成果により冗長マニピュレータが用いられることの多い協労ロボットの人との接触を手先が環境と接触する作業下においても検出可能となる. 研究実施計画では研究課題2年目には冗長自由度1の冗長マニピュレータにおける動的可操作性多面体並進についての実機検証と,冗長自由度2以上への拡張を行う計画となっている.しかし,冗長自由度1のマニピュレータの実機実験環境構築が難航しており,研究に遅れが生じている.冗長自由度2以上のマニピュレータに関する動力学特性導出については,従来使用していたグラスマン代数とテンソル代数の繋がりについて調査することにより,作業空間の直交補空間が2次元、3次元の場合についてテンソルの形での導出に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の2年目における研究進捗状況は以下のとおりである.
・初年度に本研究室で従来より所有する通常のサーボモータにより構成された平面3関節冗長マニピュレータを用いて,動的可操作性多面体の並進現象について実機実験を実施した.その結果,マニピュレータ制御性能や駆動トルク計測性能,パラメータ誤差により正確な動的可操作性多面体の形状や並進ベクトルは計測できなかったが,動的可操作性多面体の並進現象の観測に成功した.また,初年度にはサーボモータの出力軸にトルクセンサが内蔵されたROBOTECH製のUNISERVOを用いた平面三関節冗長マニピュレータの設計製作も行った.
・研究課題2年目では動的可操作性多面体の並進ベクトル導出で得られた知見をもとに,マニピュレータが出力可能な操作力の制限を表す操作力多面体の動力学特性による並進現象を明らかにした.また動力学特性導出の知見を応用し,冗長マニピュレータの手先以外への接触をセンサを用いずに駆動トルクから導出する冗長マニピュレータの冗長性を利用した衝突検出手法の提案を行った.更に,動的可操作性多面体の並進現象について冗長自由度2以上への一般化についても進展が得られた.冗長自由度2以上への拡張には作業空間の直交補空間の基底ベクトルの導出が必要になるが,従来使用していたグラスマン代数では2次元以上の空間は2重ベクトルで表現されるため基底ベクトルとしての使用は困難であった.そのためテンソル代数とグラスマン代数の繋がりについて調査することにより,2重、3重ベクトルについてテンソルの形での導出に成功した.しかし,UNISERVOを用いた冗長マニピュレータの実機実験環境の構築には遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究方策として,従来通りまず冗長自由度1のマニピュレータおける動的可操作性多面体の並進に関する実機検証を行うと同時に,冗長自由度2以上の一般化マニピュレータに関する拡張作業空間上の変数を用いた動力学方程式の導出を行う.その後,UNISERVOを用いた冗長マニピュレータの平面4関節冗長マニピュレータへの拡張を行い,最後に一般化マニピュレータにおける動的可操作性多面体の並進に関する実機検証を行う. また,研究課題2年目の成果として操作力多面体の並進と,運動学的冗長性を利用した衝突検出が得られた.そのため,操作力多面体の並進については既に学会発表を終えているので研究課題3年目に学術論文への投稿を行う.また運動学冗長性を利用した衝突検出については未だ基礎実験が完了した段階で,学会発表等行っていないため研究課題3年目に学会発表を行い,研究課題4年目に論文投稿を目指す. 冗長自由度1の平面3関節冗長マニピュレータを用いた動的可操作性多面体の並進に関する実機検証はUNISERVOを用いた冗長マニピュレータの実験環境構築が難航しているため,付属的な機能をそぎ落とし駆動機能と保護機能,計測機能のみに機能を絞ることで早期の実機実験環境構築を目指す.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた原因としては冗長自由度1の冗長マニピュレータに関する実機実験環境構築に遅れが生じたためである.予算計画では研究課題2年目に冗長自由度1の冗長マニピュレータを用いた実機検証結果を用いて学会発表を行う予定であったが,研究進捗の遅れにより予定していた学会へ参加できなかったため次年度使用額が生じた. 次年度での使用計画としては,冗長自由度1の冗長マニピュレータを用いた実機検証を行い学会発表を行うと共に,操作力多面体の並進について学術論文投稿を行うことで次年度予算を使用する.
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