2020 Fiscal Year Research-status Report
Object throwing using self-rotating energy without translational motion by unmanned aerial vehicle
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20K14707
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
大瀬戸 篤司 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (10775703)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 無人航空機 / 動作生成 / 制御理論 / 飛行制御 / 運動解析 / 機械学習 / ドローン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、無人航空機(以下、無人機)の高速自転によって発生する回転運動エネルギーを利用することで、位置変動を伴わない物体投擲(空中定点スピン投擲)を実現することである。これによって並進運動・火薬・投射器の必要なく無人機からの物体の投擲が可能となる。回転エネルギーを利用した空中定点スピン投擲によって、無人機がこれまで実現できなかった任務の遂行が可能となり、無人機の適用範囲を拡大する。さらに無人機の高速回転状態を維持する制御理論を構築することで、有人航空機のスピン状態からの回復など、航空機の安全性向上にも貢献することを目指す。これらを実現するため、2020年度は以下の課題に取り組んだ。 空中定点スピン投擲の実現には、無人機が空中で回転状態のまま位置、姿勢を制御出来なくてはならない。そこで2020年度は、無人機の回転運動を維持し続けることが可能な制御理論の基礎を構築した。まずは、無人機の回転が既知の状態で、その回転運動を維持したまま定点ホバリングを実現することを目指した。本研究では、機体の回転運動を周期関数(三角関数)で表し、それらの周期関数と遅延時間等を考慮してアクチュエータの出力を周期的に変えることで、飛行制御則を構築した。さらに、申請者が過去に開発した無人機の動力学シミュレータを改修し、無人機の高速回転状態を模擬可能とした。構築した制御則をシミュレータに実装し、シミュレータ上で姿勢の一軸を回転した状態で、位置、姿勢を制御することに成功した。 次に、開発した制御理論の検証と、機体の回転運動の計測、モード解析を行うために必要な回転試験装置の設計と開発を行った。開発した回転試験装置は、装置の中心に無人機を取り付けることで、姿勢軸(ロール、ピッチ、ヨー)を独立して回転させることが可能となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、空中で高速回転運動を維持するための制御理論の構築と、高速回転状態の解析、運動分類を行う分類器を開発する計画であった。 無人機の高速回転運動を維持し続けることが可能な制御理論の構築と、理論を検証するための高速回転状態を模擬可能な無人機の飛行シミュレータの開発・改修は予定通りに研究が進捗した。 さらに2020年度は、回転試験装置を設計・開発し、開発した試験装置を用いて無人機を各姿勢軸周りに回転させる回転模擬試験を行い、実験により取得した回転運動データを用いた高速回転状態の運動モードの解析、運動分類を行う機械学習アルゴリズムを開発する予定であった。回転試験装置の開発は完了したが、製作が予定より遅れたこと、さらにコロナウィルスの感染拡大により、申請者の勤務先である宇宙航空研究開発機構の事業所への入構が不可能となった期間が発生したことにより、2020年度内に試験装置を用いた実験データの取得が出来ず、解析アルゴリズムの開発と検証を行うことが出来なかった。 結果として研究全体としては、やや遅れ気味であり、予定していた論文投稿、学会発表を行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、2020年度に実施できなかった回転試験装置を用いた高速回転運動模擬試験を優先的に実施する。試験により高速回転運動の模擬データを取得し、運動データを用いた高速回転状態の運動モードの解析、運動分類を行う機械学習アルゴリズムを開発する。また2020年度に開発した、回転運動が既知の場合に適用可能な高速回転運動を維持するための制御理論を実機に実装し、姿勢一軸が既知の回転状態にあるときに、理論通りに飛行制御が可能であることを、屋内飛行試験を通して実証する。そして2021年度に開発予定の高速回転運動の分類器と、制御理論を組み合わせることで、回転状態が未知の場合でも、無人機自身が回転状態(周期、回転軸等)を解析し、回転状態を維持したままの飛行を行うことを目指す。さらに2021年度から、無人機による物体の投擲動作理論の構築も開始する。 そして2022年度は、それまでに開発した制御理論を統合し、高速自転によって発生する回転運動エネルギーを利用した位置変動を伴わない物体投擲を実演することを目指す。 また論文投稿、学会発表は2021年度より積極的に行う。
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