2020 Fiscal Year Research-status Report
輻射伝熱場と電磁流体場の連成解析による遮断器アーク放電の消弧機構の解明
Project/Area Number |
20K14722
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
平山 智士 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (70759274)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電力用遮断器 / アーク放電 / 輻射伝熱解析 / アーク放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
アーク放電の消弧現象は,電力用遮断器の性能を決定づける最も重要な現象であり,その詳細を数値解析から理解する試みがなされてきた。しかしながら,複雑な輻射吸収過程に起因した膨大な計算コストから,輻射エネルギーの再吸収現象に関しては未だ十分に議論されていない。本研究課題では,申請者が既に開発した遮断器アーク放電用の電磁流体解析プログラムをもとにして,新たに開発する輻射伝熱場解析モジュールと組み合わせることでアーク放電の消弧現象を再現できる解析プログラムを完成させる。この解析プログラムを用いて,電力系統用遮断器の消弧現象を解明することを目的としている。 輻射/再吸収伝熱場の解析では,テーブル化した放射係数・吸収係数データを参照しながら計算を実行するため,今年度は送電系統用遮断器および配線用遮断器の電流遮断ガスであるSF6および空気の放射・吸収係数の計算プログラムを開発し,それらの特性を検討した。この計算プログラムでは,束縛-束縛遷移により生じる線スペクトル放射,再結合により生じる連続スペクトル放射が考慮されている。さらに,簡易的な輻射エネルギーの再吸収モデルを用いて,送電用ガス吹き付け方式遮断器に与える再吸収現象の影響を非定常電磁流体解析から検討した。解析結果から,輻射の再吸収現象を無視することで電流零点での残留コンダクタンスは40~60%程度まで低下してしまい,遮断性能を過大評価する可能性があることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染対策からの研究活動への影響を受けて,送電系統用遮断器の検討の一部分を前倒して実施するとともに,輻射伝熱場解析モジュールの開発を次年度初頭に実施するように研究実施時期の変更をしたが,研究計画全体としてはおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では,輻射伝熱場解析モジュールの開発を行い,輻射伝熱場と電磁流体場の連成解析プログラムを完成させた後に,その解析プログラムを用いて,消弧現象の解明を試みることを予定している。この検討では,アーク放電中の電子温度と電子数密度の経時変化とアーク放電の冷却メカニズム(輻射,対流,熱伝導)から議論を行う。
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Causes of Carryover |
ワークステーションは予定よりも割高であったが,新型コロナ感染対策のために参加を予定していた学会がオンライン開催に変更され,旅費を使用しなかったために残額が生じた。本年度の残額はネットワークケーブルといった消耗品に充てる予定である。
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