2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on Distributed Wayside Energy Storage System for Energy Saving in DC electric Railway
Project/Area Number |
20K14725
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 宏泰 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30844063)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 直流電気鉄道 / 省エネルギー / 蓄電装置 / 地上蓄電システム / 回生エネルギー / 安定性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
直流電気鉄道システムにおける回生電力に関して,更なる有効活用の余地がある。そこで本研究では,蓄電システムによる直流電気鉄道システムの高エネルギー効率化を目的とし,分散型地上蓄電システムを提案し,その協調制御法およびシステム設計法の確立を目指す。直流電気鉄道システムでは,システム内の電圧変動が非常に大きく,絶縁等の観点から決まるシステム内の電圧の適正範囲の制約から,流せる電流が制限されるという課題を抱える。このため,回生電力が制限され,エネルギー効率の低下を招く。そこで本研究では,蓄電装置を複数に分散して設置することで,1箇所に設置した場合よりも広範囲にわたって回生パワー吸収・加速アシスト効果が得られる分散型蓄電システムを提案する。しかし,単に複数の蓄電装置を分散して設置するだけでは,各蓄電装置間の不要な電力潮流等による効率悪化やコスト増加の懸念があるため,分散型蓄電システムの各分散システム間の協調制御法,最適な分散設置数・エネルギー容量決定法について検討を行う必要がある。 そこで,本年度では,まず単体の地上蓄電システムの充放電制御系設計法の確立を実施した。ここで提案する設計法によって,制御系の安定性と省エネルギー効果のトレードオフを考慮し,最適な充放電制御ゲインを決定することが可能となる。それと同時に,本研究で提案する分散型地上蓄電システムの協調制御法を検討するうえで,システムの安定性を考慮することが可能となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度では,まずは地上蓄電システム単体を対象に,充放電制御系の設計法について検討を行った。一般的な集中型地上蓄電システムの充放電制御系ゲインに関して,安定性と省エネルギー効果のトレードオフがあることが知られている。しかし,このトレードオフ関係を陽に考慮した理論的な設計法はこれまで明らかにされておらず,試行錯誤的に保守的な値に設定しているのが現状である。そこで,本研究では,変電所・車両・地上蓄電システムから構成される対象システムをモデル化し,導出モデルの安定性解析を行うことで,安定性を損ねない範囲で最大の充放電制御ゲインの設計が可能となった。提案手法の妥当性は,ミニモデル実験によって検証を行い,設計したゲインを適用した場合でも,不安定になることなく充放電が可能であることを確認した。また,提案決定法を実スケールのき電シミュレーションに適用し、その省エネルギー効果の検証も実施した。この決定手法により,充放電制御ゲインの決定手順の簡略化につながるとともに,安定な条件で省エネルギー効果が高い充放電制御が可能となるだけでなく,本研究で提案する分散型地上蓄電システムの協調制御法を検討するうえで,安定性を陽に考慮することが可能となることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
提案する分散型地上蓄電システムのメリットを十分に活かすためには,各蓄電システム間で協調制御を行うことが効果的である。そこで,回生吸収・加速アシストにおいて,各分散蓄電システムの電力配分制御法の提案を行う。電力配分制御に関しては,地上―車両間の相互通信を利用し,車両の速度や位置といった情報を積極的に用いることで,分散設置のメリットを活かしたきめ細やかな制御を実現する。一方,集中型システムに対する提案システムのデメリットとして,各分散要素のエネルギー容量が比較的小さいため,集中型システムよりもより厳密な蓄電量管理が必須である点が挙げられる。そこで,ここでは省エネルギー効果を最大限発揮しつつ,少ないエネルギー容量に対しても過充電・過放電を未然に防止する厳密な蓄電量管理手法を提案する。 上記の協調制御法については,ミニモデル実験で制御の動作検証をしたのち,実システムを模擬した数値シミュレーションで省エネルギー効果を検証する。なお,提案システムでは従来の集中型システムに対するコスト増加の懸念がある。そこで本研究では,コストに直結する要素としてエネルギー容量を挙げ,集中型地上蓄電システムのエネルギー容量と分散型地上蓄電システムのトータルエネルギー容量を合わせることで,従来システムから大幅なコスト増加を生じない範囲で検討を行う。 分散型地上蓄電システムの制御法の提案・検証が終わり次第,分散型地上蓄電システムの設計法確立に着手する。具体的には,評価指標として省エネルギー効果とコストをそれぞれ評価する設計指標を導入することで,最大の費用対効果を実現する見通しの良い設計を提案する。また,路線全体にわたって最大限の回生パワー吸収・再利用を実現しつつも,導入コストの観点から最小限のシステム分散数とするための分散蓄電システム間隔について,直流パワーフローに着目した検討を通じて明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定では,令和2年度にモータ・ジェネレータ実験装置を購入予定であったが,COVID-19感染拡大による大学ロックアウトの影響を受け,実験スケジュールを大幅に変更せざるを得なくなった。そこで令和2年度では,主として数値シミュレーションを用いて,地上蓄電システムの充放電制御系の安定性解析及び制御系設計法の提案を行った。 上記理由から,令和2年度に予定していた実験装置の購入は見送り,令和3年度に改めて購入する予定である。
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